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2011年7月6日
東日本大震災は日本の没落を招くのか
- 自然災害と経済成長の経済分析から学ぶ -
シニアエコノミスト
福田 佳之

・これまでの自然災害と経済成長の関係についての実証分析によると、自然災害が及ぼす経済への短期的な影響は総じてマイナスだが、先進国に限れば、プラスである。 ・次に、長期的な影響の分析では、自然災害が人的・物的損害をもたらし経済にマイナスとなる見方と自然災害が「創造的破壊」を招くことで経済にプラスとなる見方に分かれる。「創造的破壊」でプラスになるのは、比較的一人当たり所得の高い国である。 ・こういった過去の分析を踏まえると、今回の日本は短期的にも長期的にもマイナス成長に陥るとは考えられない。ただし、東日本大震災発生前後の日本にはこれまでの分析では考慮されていない特殊要因が存在していて、長期低迷をもたらす恐れがある。 ・特に気がかりなのは、今後のものづくりは「オンリーワン」から「ロバストネス(事業継続の頑健性)」が重視されることである。事業継続への備えをしない日本企業は技術力が高くても世界のサプライチェーンから外される恐れがある。 ・東日本大地震を、1755年のリスボン大地震になぞらえる声がある。リスボン大地震は当時のポルトガルGDPの3~4割を喪失させ、長期的な国力低下のきっかけを作ったと言われている。だが、リスボン大地震後のポルトガルでは、ポンバル侯爵を中心に産業化と国政改革が実施され、国家の建て直しが行われている事実を見逃してはならない。 ・特殊要因を克服しつつ東日本大震災の復旧・復興を実現するには、まず政治家などのリーダーシップが不可欠である。いたずらに悲観主義に陥るのではなく、復興策を着実に実施しなければならない。それと同時に、危機感をバネにして具体的な国政改革に着手することが必要であろう。

【キーワード】

東日本大震災、福島第一原発、ポスト3.11、復興財源、「創造的破壊」仮説、サプライチェーン、V字回復、政界混乱、電力制約、ニッチトップ、生産拠点の海外シフト、権限委譲、オンリーワン、ロバストネス(事業継続の頑健性)、BCP、リスボン大地震、ポンバル侯爵、国政改革

PDF : TBR産業経済の論点 No.11-08(452KB)