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2014年11月5日
「IoT」対応の落とし穴
チーフエコノミスト
増田 貴司

 家電製品から自動車、産業機械まであらゆるモノが、埋め込まれたセンサーによってインタ ーネットにつながるインターネット・オブ・シングス(IoT)が、新たな商機として注目されている。 その考え方や手法は昔からあったが、IT(情報技術)の進化により手軽に実現できるようにな ったことで、取り組み事例が増えてきた。  キヤノンは、複合機1台ごとの印刷枚数、トナー残量、部品の摩耗状況等の情報をネット経 由で収集し、異常を早期に察知する仕組みを導入している。担当者を迅速に派遣して修理す ることで、顧客が複合機を使えない時間を最小化する。部署ごとの利用情報を顧客企業に提 供することで経費節減にも貢献できる。  ブリヂストンは、IoT を活用した鉱山車両用の超大型タイヤの維持管理システムを構築して いる。タイヤ寿命を伸ばし、稼働率を高め、顧客満足を向上させている。  IoT が社会に変革をもたらすことは間違いなく、企業はこの潮流に積極的に対応する必要 がある。だが、目的と手段を混同しないように注意したい。IoT を使ったデータ収集や「見える 化」、遠隔監視などは、それでどのような問題解決や改善、価値創出が実現するかが重要な のだが、いつの間にか見える化や遠隔監視自体が目的にすり替わってしまうことがある。  見える化が得意な企業として知られるトヨタでは、見える化によって皆の知恵を引き出し、 問題解決につなげる仕組みが重視される。データを集め、きれいなグラフをつくって見せるだ けの行為は「見せる化」と呼ばれ、戒められるという。  企業の IoT 対応も「見せる化」になってはいけない。IoT 活用事業は、モノとサービスを一体 で捉え、新たな価値を生む仕組みを構想できるかどうかが成否の鍵となる。 (本稿は、2014 年 11 月 4 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)