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2007年10月1日
大学の一芸入試

 「一芸に通ずれば、多芸に通ず」という言葉があります。学業であれ、仕事であれ、一つのことに専心、究めれば周辺の多くの事柄も見えてくるということでしょうか。  シンクタンクという仕事で一つのことを調査研究するとなると背景や周辺情報まで調べる必要があることからも、一芸が何であれ、その目的が何であれ、結果的に一つの芸を究める過程で周辺の多数の芸を修得しなければ一芸を究めたことにならないのは納得できるところです。  話は飛んでしまいますが、大学入試の方法に「一芸入試」なる制度があります。一芸入試枠とは、入試本番の筆記試験とは関係なしに、特技を根拠に設定された入学枠を指します。一芸に通じた受験生は、若くても一芸に通じる過程で様々な創意工夫・努力をしているなど、その存在が他の学生の参考になるという大学関係者の説明を聞いた記憶があります。  これまでマスコミに取り上げられた事例として、最近では早稲田大学にトップアスリート入試枠で入学した卓球の福原愛選手、過去には亜細亜大学、大東文化大学の剣玉日本一、早稲田大学の広末涼子、立命館大学の倉木麻衣を芸能分野での活動を評価して入学させるなど数多くの例があります。一般に才能あるスポーツ選手等が才能を更に磨くための環境を提供することは何とか理解できます。しかしながら、剣玉や芸能活動はいかがなものでしょうか。  今年5月には、有名野球高校での「野球留学」が高校野球連盟憲章に抵触するのではないかと問題になりましたが、夏の甲子園では「野球留学」とは無縁の佐賀北高校が優勝して、猛暑に苦しむ日本中にさわやかな話題となりました。この「野球留学」も高校版一芸入試と言えるのではと考えています。  大学評価の項目の中に財務状況、入学定員の確保も含まれています。有名人の入学、スポーツ選手の活躍で、大学の知名度向上・学生集めを目的とする「一芸入試」、「野球留学」も大学、高校の経営的側面からやむを得ずやっておられるのでしょうが、産業界では、最近の大学生の質が落ちているというのは今や定説になりつつあります。一芸入試のような即効性は期待できないかもしれませんが、入学時より卒業時のレベルが下がると言われる多くの大学にあっては大学の本来の使命は何か、大学の評価向上につながる「一芸」とは何か等々、卒業生を受け入れる産業界とともに考えてみてはいかがでしょうか。  これといった芸を持たない人間が、やっかみ半分で書いていますが、せめて老後の暇潰しができるような趣味の一つも持ちたいものと考える今日この頃です。