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2014年10月1日
ものぐさ活用法
研究員(繊維調査担当)
安楽 貴代美

 私の利き手は右ですが、数年前から、PC のマウスを利き手ではない左手で操作するようにしています。その利点は、マウスを動かしながら右手で他の動作ができることです。  慣れてしまえば、どうということもない変化ですが、もともと右手で持っていたマウスを左手に変えるのは意外と骨が折れ、慣れるまでに数カ月程度の時間がかかりました。  苦労をしてマウスを持ち替えた理由は、右手だけでマウスとペンとテンキーと電卓を交互に操作するのが面倒で仕方がなかったためです。  私は生来の無精者で、心の底から面倒と感じることを回避するためであれば多少の面倒は厭いません。数カ月間マウスの動きが鈍くなっても、これまでになかった動作で左手がつりそうになっても、大して苦にならず、むしろ、自分にとって面倒なことを回避する方法を自分で見つけたことで、新しい技術を習得しているかのような楽しい気持ちにもなりました。単純なものです。自己満足で、仕事もはかどるかもしれません。  自分を省みて実感することですが、無精者やものぐさな人ほど、何のためにその手法、その作業、その仕事をしなければならないのかということを、飽きることなくしつこく考えます。もし不要となれば、さっさと手を引けるからです。目の前のこの面倒な作業をどうにかして削れないか、避けられないか、これまでにない抜け道を探す労力を惜しみません。  そして、より簡単な方法で成果が出せたり、手順を省いて同じ作業内容をこなせたりした時は、何かしら得をしたような気がします。もちろん、成果が伴わない手抜きは論外です。  子供の頃から面倒を避けたがる私は、試験前になると決まって机の掃除を始めたりして親をあきれさせていました。これも「テスト勉強をするくらいなら、いつもは先延ばしにしていた机の片付けをする方がまし」「本当の面倒を避けるために目先の面倒を片付けよう」という心の現れです。  勉強から逃げるのはまるで褒められませんし、実際完全に逃げることは不可能ですが、一方で、面倒な机の掃除はテスト前になれば自然と実践されるとも言えます。全く褒められませんが。  ものぐさな気質は、持って生まれたものとあきらめるとして、課題に対して楽な道を探したり、目先を変えてやり過ごしたりすることを子供の頃から繰り返してきた経験は、一方で、どうやっても逃げられないものもあるという苦い思い出とあいまって、自分の中に蓄積されてきました。もしかしたらこの無精者の自分の特性は、仕事上どうしたら最短でゴールにたどり着くか、どの工程が無駄で省けるかということを見極める力として活かせているかもしれません。自分の短所の一つを、仕事の場で多少なりとも役立てられるとしたら、喜ばしい限りです。今更性格はそう変わりませんので、うまくつきあうしかありません。  さて、冒頭でご紹介した左手マウスですが、「普段使わない左手を刺激することで、右脳が活性化する」といった夢のような説もあるようです。残念ながらその効果は実感できていませんが、右の肩こりが左にまで拡大してしまったような気はします。