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2011年6月1日
繊維トレンド5・6月号 2011 No.88

■特別レポート

東レ株式会社・株式会社東レ経営研究所共催 繊維産業シンポジウム講演抄録 東レグループの地球環境への取り組みとグリーンイノベーション事業の拡大

東レ株式会社 常任理事 技術センター担当 地球環境事業戦略推進室長 岡 研一郎

 去る3 月4 日に金沢市のANA クラウンプラザホテルにおいて、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で、繊維産業シンポジウム『北陸産地の復活を目指して』を開催しました。当日は、筑波大学大学院システム情報工学研究科住田潮教授、スウィングバイ2020 株式会社海野惠一代表取締役社長、東レ株式会社岡研一郎常任理事の3 人の講師にご講演いただきました。本号では、そのうち、岡研一郎常任理事の講演内容をご紹介いたします。なお、住田潮教授、海野惠一代表取締役社長の講演内容については、弊社の経営情報誌『経営センサー』にて別途ご紹介いたします。

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■ファイバー/テキスタイル

ラグジュアリー繊維製品分野で静かに進行している技術的架橋革命 - Technical revolution of connectivity -

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)ドメインの異なるファッション市場とスポーツウエア市場が「人にやさしい機能を開発する技術」という橋で結ばれつつあるヨーロッパ市場の動き。
(2)真夏の炎天下でも洒落た濃色のブレザーが涼しい毛織物、撥水・防水性を備えながら汗も蒸散する天然素材の織物など、イタリアの高級織布業者の戦略。
(3)カシミア・ビキューナ・キャメル、更に超長綿などラグジュアリーな天然素材に様々な機能性を持たせた糸を開発する紡績業者の活躍。
(4)スポーツやアウトドアなど機能性を訴求する分野にウールなどの天然素材でファッションセンスを持ちこむ流れ。
(5)上記のようなラグジュアリー分野におけるヨーロッパ繊維産業の動きは、川上から川下まで地域・産地のサプライチェーンが完備してこそ可能になるもので、今後の日本のあり方を考えるヒントとなる

2012年春夏物 PITTI FILATI(FIRENZE)

デザイナー 小川 健一

 私はデザイナーですから、物作りが大好きな人間です。特に素材が大好きで良い素材を見ると何を作ろうかワクワクします。1 月28 日、今回もFIRENZE で開催された2012 年春夏物の糸の展示会に行って来ました。その時に私が感じたことをお伝えします。 糸の高騰  まず今シーズンの大きな問題は素材価格の高騰です。天然素材の価格が昨年に比べて軒並み上がっています。出来上がった糸のサンプルを見ながら価格を聞いていくのですが、「今日の価格は***ユーロですが、これは最終価格ではありません」と不安になるような回答が返ってきます。ウールなどは昨年から価格が高騰している上に素材の供給も難しいという話が出ていました。

信州大学繊維学部創立100 周年(後編) -グローバルに見た繊維教育研究と次世代に向けた取り組み-

信州大学 繊維学部長 濱田 州博

【要点(Point)】
(1)欧州の繊維系大学・研究機関では、専門分野を特化しており、優れた設備を備え、高い技術力により欧州における繊維共同研究の中心として機能している。
(2)米国ノースカロライナ州立大学繊維学部は、大規模なモデル製造工場を持ち、紡糸から縫製に至るまでの繊維製造やアパレル製造において教育研究が可能である。
(3)アジアにおいても繊維の研究開発で中心となる大学・研究機関があり、特に、中国における繊維系大学・研究機関は、質量ともに充実してきている。
(4)信州大学繊維学部では、ファイバーイノベーション・インキュベーター(Fii)施設を2011 年4 月より運用し、多様な産学官連携体制、人材育成機能、情報ハブ機能を構築する。

■縫製/アパレル

アフリカにおける縫製産業の現状と将来性

日本貿易振興機構アジア経済研究所 アフリカ研究グループ 福西 隆弘

【要点(Point)】
(1)サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、欧米市場への優遇アクセスが提供されていることを背景に、それらの市場への衣料品供給において30 年以上の歴史がある。
(2)主なアフリカの輸出国は、ビジネス環境ではバングラデシュやカンボジアと同じかそれ以上の評価を得ているが、賃金が高いことが競争上の問題となっている。
(3)アジア諸国での急速な賃金上昇、倫理的な消費意識の高まり、先進国政府によるアフリカ支援の継続を考えると、アフリカの縫製産業は、今後さらに成長する可能性がある。

大震災後のファッションビジネス -地震を契機に、日本の繊維産業の構造変化が加速する- 

坂口 昌章 客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

【要点(Point)】
(1)東日本大震災の被害は甚大だが、農業、水産業に比べれば繊維産業の損害は比較的少ない。中長期的に深刻な影響を与えるのは、電力不足による計画停電、原発事故による放射能汚染である。
(2)計画停電は、首都圏の製造業、流通業、小売業に大きなダメージを与える。一般企業も本社機能の移転、分散等を図る必要がある。
(3)放射能汚染で、日本に滞在していた外国人は国外退去した。外国人観光客も数年は見込めない。中国人研修生の帰国、あるいは、研修生の申込みがなくなると全国の縫製業等に大きな影響が出る。また、これを契機にラグジュアリーブランドの撤退もあり得る。
(4)自粛ムードにより、外食産業、観光産業は大きな痛手を受けている。贅沢品、ラグジュアリー消費も落ち込む。また、消費者意識の変化は長期的なトレンドになるだろう。
(5)大震災前の繊維アパレル業界が抱えていた「中国委託生産危機」「海外市場開拓」という課題は、震災を経て、ますます重要性を増している。
(6)義捐金、支援のための消費という社会的意識が企業、個人に芽生えている。経済合理性ではなく、社会のための産業、ビジネス、雇用、消費という意識が生まれつつあり、企業はその対応を急ぐ必要がある。
(7)世界中から日本を支援したいという声が届いている。海外市場進出もまずチャリティから考えるのも有効である。売りたいものを売るのではなく、必要とされるものを持っていく。市場調査の結果ではなく、個人の信頼関係からビジネスをスタートさせるという発想の転換が必要である。
(8)企業は、大震災前の全てのビジョン、事業計画、予算等を見直さなければならない。前例踏襲ではなく、全く新しいビジネスモデルを検討することが重要である。
(9)東京一極集中は終焉を迎え、地方都市の自立が求められる。日本全体のリスク分散を考えなければならない。また、国内のフェアトレード、エネルギーを消費しないクリエイティブな産業育成という視点も重要になる。

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シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第14 回 Esmod の教育体系とファッションビジネスの国際化 

信州大学 名誉教授・繊維学部 特任教授 大谷 毅 宝塚造形芸術大学 教授 同専門職大学院 デザイン経営研究科長 菅原 正博

【要点(Point)】
(1)現存するファッションスクールで最古のEsmod Paris も、オートクチュール時代はmodelisme を主領域とし、atelier 要員、主にはパターンメーカー養成を主眼とした。
(2)1960 ~70 年代にプレタポルテ(ヌーベルクチュール)事業が成長するに及び、stylisme の領域を取り込み、デザイナー養成を展開した。
(3)情報化が国際化を促し、市場をグローバルに求め競争が激化すると、規模も拡大、経営が複雑になり、販売や後方業務を含む専門のファッションビジネス要員の需要が増えた。ファッションビジネス領域を含め教育分野を拡充し、いまや、(2)ファッションビジネスは、(1)ファッションデザインクリエイション(stylismeとmodelisme)に並ぶまでになった。
(4)あくまでも実務的ないし実践的であるが、ファッションの高等教育にあっては、創造力の涵養が基本であり、新しいもの、興味や関心を集めるものを考え、かたちにする努力を、繰り返し実行させることが肝要であって、最初から、ゼニ勘定で創造性を抑制してはならない。
(5)創造性の成果は外部評価を不可避とする。教員に豊富に実務経験を持つ者をそろえ、また、外部評価員に現役実務家をラインアップし、また、学生にインターンシップを義務付け、所要のプログラムには外部高等教育機関の基準を取り入れて連携するのは、創造にも相応の客観性が必要であることの自覚を促す意味もある。
(6)ファッションビジネスの国際化に必要な知識やliteracy(外国語やコンピュータなど)は余すことなく訓練し履修させ、その結果、一定の基準に達したかどうかを客観的にチェックする。その結果、かなりの学習を強要することになる。
(7)クチュールメゾンにはstylism を所掌するstudio 部門と、modelisme を扱うatelier 部門がある。英訳するとstylisme はdesign であり、modelisme はpatternmaking になる。そのdesign がデザイン、patternmaking がパターンと和訳された瞬間、各自のメンタルモデルが働いて、stylisme やmodelisme 本来の意味が伝わらなくなる危険がある。ファッションビジネスの国際化を検討するときマイナスになるとも限らない。

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■小売/消費市場

米婦人下着市場の現状

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」 シニアエディター マヤ・カワムラ

【要点(Point)】
(1)米国の最大の規模を誇るインティメットアパレル見本展示会CurveNY(カーブNY)展が2月21日から三日間行われた。
(2)婦人下着大型小売チェーン・ビクトリアズシークレット(Victoria's Secret)は米国で最大店舗数を誇り、市場拡大に最も貢献しているメーカーの一社。
(3)各関連メーカーは新素材を開発し、綿花価格の急上昇に対応している。

活気づくアラフォーマーケット

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)アラフォー(アラウンド40)マーケットが再び活気づいてきた。最近では「40 代女子」という表現がクローズアップされている。団塊ジュニアがアラフォーに突入したことで、ますます大きなビジネスチャンスが生まれようとしている。
(2)今春、大手アパレルから相次いでアラフォーブランドが続々とデビューしている。果たして、百貨店でアラフォー顧客を獲得することができるのか。2005 年から登場している「新大人服」とは異なるコンセプトが特徴となっている。
(3)続々と登場するアラフォーブランドだが、問題点も垣間見える。ライフスタイル提案の鮮度を維持する難しさ、サイズ展開の乏しさという問題点に加え、昨今百貨店への進出が目覚ましいファストファッションとの競合に勝てるかが今後の見所となりそうだ。

■新市場/新製品/新技術動向

ファイバーフロンティア社について

繊維調査部

 前号にて、BtoC を中心にファッション分野のイー・コマース(以下EC)を概観したが、今号では、繊維業界の中で川上を中心とした分野におけるBtoB のビジネスモデルとしてファイバーフロンティア(株)の取り組みを紹介する。ファイバーフロンティアは東レ、帝人に加えて旭化成、三菱レイヨン、クラレ、ユニチカ、日清紡績、日本毛織、三菱商事、蝶理、モリリンなど多くの企業が出資を含めて参画しているが、本稿では東レの取り組みを中心に紹介する。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

特恵関税制度の改正と繊維業界への影響

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任 鍵山 博哉

1.特恵関税制度とは  特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)とは、開発途上国の経済発展推進のため先進国が自発的に与える優遇策のことで、特定の途上国からの輸入品について、通常の関税率よりも低い税率または無税措置を適用することで、途上国の輸出拡大、工業化促進を図り、経済発展を支援しようとする制度である。日本の特恵関税制度は、1971 年から開始されており、10年ごとに過去3度の制度改正が行われてきた。そして、先般、2011年度(2011年4月1日~)の関税制度の改正によって、特恵関税制度の適用期限が10年間延長されたと同時に、大きく制度の改正が行われた。  繊維品についても、今回の改正によって、いくつかの点で大きな影響がみられている。以下、特恵関税の改正のポイントと繊維産業への影響について記す。

■統計・資料

主要国の合繊主要4品種の需給動向

日本/韓国/台湾/アメリカ/中国/インドネシア/タイ/インド