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2006年4月1日
おとなの学習
シニアコンサルタント
福田 貴一

 このごろ「おとなの・・・」というフレーズを見かけます。「おとなの絵本」「おとなの勉強法」「おとなのドリル」「おとなの休日」などなど。  そのそれぞれに、「おとなの」と言葉を添える意図を感じます。  私は、仕事柄「おとなの学習」という場面に立ち会います。それは、学校教育で慣れた学習の仕方とは違った、「おとなの学習者」としての心構えや意識の働かせ方、取り組み方が大切になる場面です。  さて、「おとなの学習」とは、いったいどういうものでしょうか?  われわれ「おとな」は、既に多くの経験を有していて、日々その経験を基に更なる経験を積み重ねていきます。その中に存在する学習と言う行為に期待されるものは、それら経験によって形成されたある種の価値観や思考パターンなどを継続的に変化させていくことにあると考えられています。  つまり、学校で習うことを、主に「これからの人生において大切なものを築き上げていくこと(形作る学習)」とするならば、「おとなの学習」は「経験とともに築かれたものの形を変えていくこと」とも言えます。  ですから、ただ単に新しい情報を積み重ねて知識を溜めていくというレベルでは、それは「おとなの学習」とは言えないのかも知れません。  何かしらの新しい情報を、既に頭の中にあるものの見方や枠組みに照らして解釈するばかりでなく、そうした既存のものの見方や枠組みに過度にとらわれることを注意したり、時にはそれらを変容させるような意識の働かせ方が、「おとなの学習」にとって大切なことなのです。  また更に注目したいのは、そのような学習の仕方(ラーニングスタイル)は、個々人によって異なり、それぞれに特徴を持っているという点です。  話をしたり他者と交流をしながらの学習を好むタイプや、思考をめぐらせながら、一人でじっくりと取り組むタイプ、とにかく体を動かして体験することを第一に好むタイプなど、その特徴はさまざまです。  個人のラーニングスタイルに影響を与える要因とその測定法に関する研究は様々になされています。自分のラーニングスタイルを意識して学習に取り組むということ自体、学習者個人にとってはもちろん、それを支援する立場にある者(教育者や教育企画者など、学習環境提供者)にとっても、関心を寄せるテーマの一つと考えます。  新年度がはじまり、気持ちを新たにして学習の機会を持とうと考えている方もいらっしゃるかも知れません。  ぜひ、ご自身のラーニングスタイルへの関心と共に、「おとなの学習」の実践をしてみてはいかがでしょうか?そして、ものの見方や枠組みが豊かに変わるような学習の成果を味わってみることができれば、素晴らしいことだと思います。