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2001年4月1日
繊維トレンド4月号 2001 No.14

■特別寄稿

「キャリアは自ら創るもの」 -これを支援する教育を目指して- ~IFIビジネス・スクールから考える~

IFIビジネス・スクール 学長 尾原 蓉子

 日本に於ける教育のあり方が盛んに論じられる昨今である。  私自身も最近中学や高等学校の教育に触れる機会があり、現在の学校教育が、急速に変化している社会や経済環境にそぐわないものになっている事を痛感している。経済同友会の教育委員会の一員として、北城格太郎委員長(日本IBM会長)の「行動する委員会」をモットーに、委員が実際に中学や高校に出向き、学生に講義をしたり、校長や教員あるいはPTAの人たちの話を聞いたり意見交換をしたりしているのだが、教育現場がわれわれの世代が経験しなかった大きな問題をかかえている事を知ると同時に、産業界と教育界の間の距離が、いつのまにか、ひどく大きなものになっている事に愕然としている。  「創造性を育てる」「自主性を育てる」といったもっともな議論が展開されてはいるが、痛感する事は、子供たち、すなわちこれからの時代をになう人材を指導育成する立場にある我々大人たち、すなわち家庭であれば両親、学校であれば教師、が、明確な教育の目標を持っていないのではないか、ということだ。これは、成人した人の能力開発についてもいえる。企業で上司や経営者が「人材育成」に取り組むとしても、それが単に自社の収益向上の手段としてだけであったとしたら、それは「人間中心の世紀」といわれる21世紀が求めるものではない。  人は何のために学ぶのだろうか。私自身はもともとの教育専門家ではないから、その道の「権威」には異論のある発言かもしれないが、私は大きく次の2つに収斂できると考えている。  第一は、教養を身につけ責任ある市民として行動し社会への貢献をするため第二は、自分の一生を通じて、自分にとって意義ある人生を生きるためこれらの目的のために、必要な知識やものの考え方、スキルを修得させることが教育であろう。とくに、経済的に豊かな国における教育は、「自己実現」を重要な目標にすべきである。「自己実現」とは、自分のやりたい仕事を、自分の能力や適性を生かして達成する、ということである。明日の糧のためには職業選択の余地などなかった時代とは違って、金銭よりも仕事やキャリアを通じて選られる喜びや達成感を求めて人は働くのであり、その為の能力の獲得と、それに磨きをかける場を与えることが企業の責任といえるであろう。さらに言えば、こういった中から、「エリート」と呼ぶにふさわしい人材が輩出されて、国をリードしたり、新しい思想や科学技術を生み出す事が切望される。 * パラダイム・シフトが求められる新しいプロフェッショナル * ファッション・ビジネスのためのプロ育成 IFIビジネス・スクールのめざすもの * ファッション産業における人材育成と活用

■市況

『選択と集中』さらに加速 -合繊各社 今年の課題-

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

日本の合繊産業にとって、2001年は大きな節目の年-前世紀末からの継続課題を抱えての新しい世紀への出発の年となる。 (1) 輸入問題に対するアクションプログラムの構築(通商政策発動などの政策要請を含む (2) IT革命への取り組み(IT武装化、新しい商流に対応するSCMの構築) (3) リサイクルを含めた環境問題への対応 (4) 優れた繊維加工技術の深化と発展 - さらに次世代への継承とそのための人材育成などなど。   日本化繊協会では、2001年度の重要課題の一つとして、「国際市場構造変化への対応」をあげているが、特にアジアの動向、中でも中国の動向は世界の繊維需給を左右する大きな影響力をもっているだけに中国からは目が離せない。その中国は、WTO加盟に向けて秒読み段階に入っており、2001年から始まる第10次5ヶ年計画とも合わせ、競争原理を導入しながら、3大改革など構造調整を進めている。競争力を高め、巨大な国内市場を擁しながらも、世界の繊維工場(供給基地)としての基盤をさらに高めて世界に挑戦してくるだろう。そうした挑戦に、日本を含めたアジア諸国がどのように対応し、「競争と協調」ができるかが21世紀に生き残る繊維産業の課題となろう。  日本の繊維産業が21世紀に、世界の繊維産業のリード役として、時代の要請に応えうる創造的な道を開拓することができるかどうか、メーカー8社のうち4社が2001年度から新中期経営計画(課題)に取り組む他、すでに中計がスタートしている企業も、ローリング方式をとっている企業も、中間フォローアップと今後の中(長)期見通しを踏まえて、新たな対策を講じるだろう。さらに、90年代後半、繊維産業の赤字に苦しんだメーカーも収益改善の目途が立ってきただけに抜本策を検討できる段階にきたともいえる。  以下、業界紙が伝える合繊7社「今年の課題」或いは「新中計の課題と目標」を追う。  掲載順序は2001年度から新中計をスタートさせる3社を先に、すでに新中計をさせている会社4社を後にした。東レは、営業改革を含め新中計(2001~03)を策定中でまだ発表していない。

■産地動向

尾州産地の現状と課題(その1)

岐阜経済大学 経営学部教授 平井 東幸

 繊維産業のグローバルな展開のなかで、全国の繊維産地の規模縮小には、地域・業種によって多少の明暗はあるものの依然として歯止めはかかっていない。消費が長期低迷するなかで、とくに輸入の著増が追い討ちをかけているのは明白だ。このところ繊維や野菜の不当廉売の緊急輸入規制についても消費者の品質が良くて安い商品を購入することを妨げるといった論調が一般紙はもとより経済紙でも多く見受けられるのは業界の実情や欧米先進諸国の状況・制度を知らぬ、一方的な主張であり、誠に残念である。それだけに「ゴールキーパー無しで、サッカーを戦うようなもの」とは、まさに正鵠を射た業界の苦しい現実を指摘した言葉である。この問題は経済のグローバル化にどう対応するのか、市場原理だけに任せては物事は解決できないという21世紀の基本的な課題を突き付けているように思われる。繊維と野菜はその試金石だろう。  ところで、編集部のお勧めにより尾州の毛織物産地の現状についてご紹介したい。愛知県商工部機械繊維産業課では、2000年3月に「愛知県繊維産地実態調査報告書[尾州編]」(限定配付)1)発行したが、たまたまこの調査に参画した経緯があることから、同産地の現状と直面している課題、そして今後の見通しについて私見も交えて概説したい。

■新製品・新技術動向

繊維製品リサイクルの現状と将来 -アパレル製品を中心として… 不要衣料は可燃ごみか?-

ファイバーリサイクル研究会 代表幹事 木田 豊

 この度、アパレル産業協会では、平成12年度の社会要請対応円滑化支援事業として「アパレル製品リサイクルの実現に向けた調査・研究事業」(略称アパ産リサイクル委員会)がプロジェクト化され全国中小企業団体中央会の助成金を得て、昨年7月にアパレル業界委員と専門家及び行政、団体、民間シンクタンク(東レ経営研究所)からのオブザーバーで構成される委員会を結成し、調査・研究を行って来た。アパレル企業の団体が初めて正面からリサイクルに取り組んだとして、新聞紙上にも度々取り上げられた。我々委員会のメンバーは「アパレルリサイクル元年」であるとの意識で当プロジェクトに取り組んだ。以下ではその調査や提言などを含めて紹介する。

■市場動向

拡大するPPスパンボンド不織布の紙おむつ市場 

東レセハン株式会社(TSI) 常務 繊維事業副部門長 福田 重人

 紙おむつ(DIAPER)のカバーストックを中心とした衛生材料用途の需要急増によりPPスパンボンド(SB)不織布生産能力は拡大を続けている。  スパンボンド方式のPP長繊維不織布は矩形口金から引き出された連続長繊維を、ネット上に直接ふるい落としてウェブを製造する方式で生産性が高く、コスト競争力を有するシートが得られDIAPERをはじめとする衛生材料用途等に広く使われている。特に独ライフェンファウザー社のSMMS(スパンボンド+メルトブロー+メルトブロ+スパンボンド))の4ビームによる4層長繊維不織布に代表される多層ビームによる超高性能マシンが開発されてから世界の主要PPSBメーカーが争って導入しているため生産能力は需要の伸びを先取りする形で大幅に増加し、その結果供給過剰を招きPPSBメーカーのサバイバル大競争時代に突入したといえる。  PPSBメーカーの将来はコンペチターとのコスト及び品質やR&D競争に勝ち抜く事は勿論であるが、主要用途のDIAPERの需要増およびDIAPERカバーストック他素材(短繊維不織布)からの切替の成否にかかっていると言って過言ではない。

■世界動向

内側から見た中国(今昔物語)10 -マネジメントのコツ-

東麗酒伊織染(南通)有限公司 社長 御法川 紘一

国営社会の真只中で合弁会社の経営にあたった筆者の経験に基づき、3月号では中国ビジネスのポイントを紹介したが、今回は中国でのマネジメントのコツを下記にまとめた。 (1) マネジメントのコツ *価値観は非常に純粋-指導者の器量を映す鏡 *あくまでも彼ら主体で-漢方的改革 *管理は彼らとの根気比べ-限りなくしつこく、限りなく厳しく *公開の原則-”平等”観念の第一歩 (2) 営業について *日系ユーザー-良いユーザーと悪いユーザー *資金回収-CashonDelivery? *クレーム!-客の理解不足、客への説明不足がないか? *個人プレーに要注意!

■トピックス

繊維関係の企業倒産状況と今後の動向

東レ株式会社 審査室長 玄地 俊司

2月26日、また、老舗繊維商社が倒産した。吉野藤(株)が民事再生手続申請に至った申立原因は、 (1) バブル経済崩壊に至る数年の間に、新たな店舗展開のため土地建物を取得し、不動産投資総額は53億7000万円に達したが、バブル経済崩壊で多額の不動産投資による借入金負担が経営を圧迫した。 (2) 新しい事業形態に対応すべく子会社(フォーシーズン、ドゥグレイ)を設立したが,いずれも失敗。12年3月期では子会社整理損12億4800万円を計上するに至った。 (3) 過大な設備投資、新たな経営戦略失敗による経営悪化に対応すべく、10年6月社長交代、リストラに着手。メインバンク東京三菱銀行の指導の下に取引5行による協調体制が確立し、抜本的なリストラを実施した。リストラは、不動産取得に関する融資債務を子会社に移転し借入金負担を軽減するとともに、従業員を大幅に削減したが、12年4月以降単価下落と売上減少の影響で13年度の事業成績が当初予想を大幅に割り込んで推移したため、1月には更なる人員削減と不採算部門閉鎖のリストラ計画を策定した。 (4) ところが2月8日、取引先のオワザ(株)の倒産で9200万円の債権貸倒れが発生。売上減少に伴う資金不足と合わせて10数億円の資金不足が明らかとなり、東京三菱銀行などに協調融資を要請したが、不調に終わり今回の申立となった。 また、27日には、地場百貨店の丸正(和歌山)が破産宣告を受けた。同社も100年以上の歴史を誇る和歌山での老舗であった。 これら、最近の倒産ケースを考えると、長い消費不況に耐え兼ねて倒産していく企業の姿が顕れてくる。最近続いている上野百貨店(栃木)、山形松坂屋(山形)、仙台十字屋(仙台)、コトデンそごう(香川)等の地方百貨店の経営行き詰まりは、全国規模での消費縮小を顕わしている。ここで、昨年の倒産状況を振り返ってみたい。

■ファッション動向

ニューヨークは今お洒落か -ニューヨーク便り-

ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT) 留学生 山内 由紀子

アルコール付きバーゲンセール  平日の夕方5時すぎ、日本にも支店を持つ高級百貨店BarneysNewYorkに、ぶらりと入ると、何やらお客の女性達がシャンペンやワイングラスを片手に、Jean-PaulGaultierやYohjiYamamotoといったブランド品を物色しているのです。見渡せば、各種アルコールのグラスを載せたトレーを片手に、ウェイター、ウェイトレスがせっせとお客様に飲み物を勧め歩いており、他にも一口ハンバーガーやサンドイッチ、キッシュ、タルト、ケーキといったフィンガーフードも種々用意されているではありませんか。ウェイター達は、積極的にお客に近づいてくるため、遠慮するまでもなく、誰でもご相伴に預かることが出来、飲み物・食べ物を手にしていない人は皆無、という売り場状態です。このアルコール&軽食付きセールは、全館挙げての催しで、お客達はグラスを持ったまま、階を往復することが出来ます。  私がここで感じた衝撃は、「食べ物vs繊維」という最も好ましくない状況に、売り手も買い手も違和感を感じていないということでした。日本円にして1着5~6万円のカシミアセーター、10万円以上のオーバーコートといった高価な商品ばかりの売り場で、お客達がワイン片手にお菓子を頬張りながら何の抵抗もなく商品を手に取り品定めをし、そして何よりも、百貨店がそのようなことを許しているのです。勿論、百貨店側のねらいは一つ、アルコールの助けを借りて、お客様の気持ちをおおらかにし、財布の紐を緩めることです 平均的日本人的感覚からすれば、非常に信じがたい販売戦略ではあるけれども、もしかしたら、日本の百貨店でも私の知らない世界では、上顧客を相手にこのような催しも行われているのだろうかとも思い、念のため高島屋百貨店の方にお聞きしたところ、やはり、「商品を傷つけるような、そのような催しはとても考えられない。食べ物を用意する場合も、売り場とは完全に別にしている」と、ごく常識的な回答でした。  こういったアルコール付きセールは、もう一つの高級百貨店BergdorfGoodmanでも、全館セールまたは、一つの売り場限定という企画の際に遭遇しており、マンハッタンでは比較的ポピュラーな企画の一つのようです。

■統計・資料

主要合繊品種別、地域別市況

1. 原油・ナフサ市況 2. 合繊原料市況(PTA、EG、CPL) 3. 紡績原料市況(P-SF、綿花) 4. 紡績糸市況(綿糸、T/C糸、T/R糸) 5. 長繊維市況(P-FY、N-FY)  6. 短繊維織物市況(T/C、T/R)  7. 長繊維織物市況(P-タフタ)