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2010年2月1日
何かお探しですか?
部長(人材開発部)
小西 明子

 近頃服が買えない。  そもそも決断力がなく、子供の頃から買い物全般が苦手でした。特に洋服に関しては「何が着たい」「自分には何が似合う」という意思がなく、何を薦められても「どっちでもいい」と答えて周囲を激怒させていました。  社会人となり、さすがにあまり無頓着でもいられなくなっても、ついぞ自分なりの着こなしやコーディネートというものを持ち合わせるには至りません。それに加え、元々の体形の欠点が年を追うごとに強化されてきて、何を着ても似合わなくなってくる厳しい現実があります。  そんなわけで、ショッピングが楽しくない。→楽しくないので足が向かない。→さすがに着るものがなくなり慌ててデパートに駆け込む。→焦って探して失敗する。→ますますショッピングが楽しくない、という悪循環に陥っているのが現状です。  この「楽しくなさ」に輪をかけるのが近頃の店員さんの接客です。最近のデパートは不景気で店員さんも暇なのでしょうか、店に入るや否や「何かお探しですか?」とにこやかに寄って来られることが多く、これが買い物下手には大プレッシャーなのです。  誤解されては困るのですが、買い物下手はコーディネートのアイデアがなく踏ん切りも悪いので、本来は人一倍店員さんのアドバイスを欲しているのです。でも、何を買うべきか具体的な構想がない段階で「何かお探しですか?」と来られると、思わず引いてしまう。「あ、いえ、別に何をということもないんで・・・」などとシドロモドロになりつつ、早々に退散する羽目になったりします。  一方でしばらく商品を眺めて「これかな?」と思い始めた絶妙のタイミングで「今、お召しのものにも合いますね」「色違いもございます」と声をかけてきてくれる店員さんもいて、うまく背中を押されて想定外の買い物までしてしまうこともあります。このタイプの店員さんのお薦めには従っておいて大きな間違いはありませんし、何より買い物を楽しめたという満足感が得られます。  こうしたすぐれた店員さんは、コミュニケーション技術で言うところの「ペーシング」を接客の中で行っているのではないかと思います。「ペーシング」とは、文字通り相手のペース・呼吸に合わせてコミュニケーションすることで相手の信頼を勝ち得、良好な関係を築く技術のこと。お店に入ってきた瞬間からお客を観察して、目を向けたり手に取るものからその人が何を求めているか、どんな好みの持ち主かを察知して、程よく「買い気」が盛り上がったところで声をかける。これはまさにペーシングの技術そのものです。  サービス精神満点の「何かお探しですか?」は、ペーシングの観点ではやや稚拙と言えそうです。相手をじっくり観察し、ペースを見極めて斬り込めば、急所を衝ける確率も高まろうというもの。不景気でお客が少ないこの時期にこそ、相手のペースに合わせることでこちらのペースに巻き込む「ペーシングの接客」で、財布の紐を緩ませる作戦はいかがでしょう。「買い物下手」も少しは心安らかにショッピングを楽しめるような気がするのですが。