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2021年1月28日
新年の挨拶(1月20日発行の「経営センサー」より)

髙林和明 代表取締役社長  新年あけましておめでとうございます。  昨年11月末に弊社代表取締役社長に就任いたしました髙林和明でございます。  旧年中は弊社事業活動に対し、格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。私は昨年11月に3年半の任務を終えタイから戻ってきましたが、このコロナ禍に海外から日本へ戻ってきた今、率直に感じていることを述べて、年頭のご挨拶に代えさせていただきます。  昨年2月頃から世界的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい始め、タイも日本と同様感染が拡大し始めましたが、タイ政府の対応は極めて迅速かつ厳しく、3月末からの非常事態宣言下、国境の封鎖、コンビニとスーパー以外の店舗の閉鎖、酒類販売禁止、県境移動制限など矢継ぎ早の施策で5月末以降感染を完全に封じ込めました。生活は大変でしたが、私は自由になった夜の時間を前向きに活用して勉強しようと思い、かねて関心を持っていた「ホフステード異文化エキスパート講座」をオンライン(ZOOM)で受講し、7月に卒業しました。COVID-19以前はZOOMを使ったことがなかったので、COVID-19の最中でも、米国、インド、日本などとオンラインで国境を跨(また)いでコミュニケーションできることの便利さを初めて実感するとともに、ビジネスマンだけでなく海外経験豊富な主婦の方、プロスポーツの指導者などと一緒に勉強し多くを学べたことをうれしく思います。また、卒業後も定期的にテーマを決めて勉強会が続いています。  さて、大学で教育学を専攻した私にとって、タイの人たちは非常に興味深く感じられました。駐在中はタイ人の考え方や行動を理解しようと勉強を重ね、最後は「タイ人トリセツ~タイ人といっしょに働くために」という形でとりまとめました。その中で『経営戦略としての異文化適応力~ホフステードの6次元モデル実践的活用法』(宮森千嘉子・宮林隆吉共著、JMAM、2019年)に出会い、異文化でのマネジメントについて知見を深められたことは大きな収穫でした。オランダの社会心理学者ホフステード博士は文化による価値観の違いという定性的な概念を6つの次元で定量的に分析しています。6つの次元とは「権力格差」「個人主義/集団主義」「男性性/女性性」「不確実性の回避」「短期志向/長期志向」「人生の楽しみ方」で世界100カ国以上を国ごとに定量的にスコア化しています。  この話でタイ人について語りだすと紙面がまったく足りなくなるので、ここからは日本人の特徴について書きます。ホフステード博士はこの6つの次元を基に世界の国をいくつかの文化グループに分けていますが、日本だけがどこにも属さないユニークな文化を持つ国として紹介されています。その特徴は「不確実性の回避の高さ」(不確実なこと、曖昧なことを許さない)と「男性性の強さ」(ここでいう男性性とはいわゆるジェンダーの話ではなく、生活より目標必達、業績を重視する指向性のこと)が世界の中でも際立って高いというところにあります。    このことが何を示すかというと、日本人は不確実なことを回避するために完璧に準備し、男性性の強さから徹底してやり遂げるという特徴を持っているということです(そうでない人もいますが、国全体の特徴としてはそういうことです)。このような日本人の特徴が細かいところまで完璧に配慮された品質の高いすばらしい製品を生み出していますが、一方長所が弱点になる点にも注目しなくてはいけません。仕事においてはスピード感の欠如や労働生産性の低さ、生活においては家庭を犠牲にしてでも一生懸命働き、業績を上げようとする態度がワークライフバランスを保ちにくくしている側面に気がついてほしいと思います。  今日本では男性が外に出て働き、女性が専業主婦として家庭を守るという昭和の生活モデルは崩壊が進んでおり、これが働く女性の負担増につながっています。「男性の家事時間世界最下位」「女性の睡眠時間世界最下位」「妊婦の死亡理由第1位自死」など不名誉なデータが存在すると聞いています。これを打破するためには、女性に偏った負担を夫婦がいかにして協力しながら分け合い、快適な生活をめざすことになると思いますが、その際に日本人がこれまで当然と思っていたことを海外からの視点を入れてちょっと参考にしてほしいと思った次第です。海外の人から見ると日本人が料理や掃除に求めるクオリティーはレストランやホテル並みと、よくいわれます。この品質を多少落としても生活に支障はないと割り切って、自分の気持ちに余裕が持てるよう、少しだけ手を抜く「ゆるさ」を持つことはいかがでしょうか。コロナ禍での自粛警察、SNS上での集中砲火など日本の同調圧力のすごさは認識した上で、決して完璧な父親、母親でなくてもよいという寛容な社会になってほしいと思います。  コロナ禍は日常の生活スタイルを変えるよいチャンスです。旦那が毎日家にいてストレスがたまっている女性もたくさんいると聞いています。これまでの日本人の常識にとらわれない合理的な生活スタイルを各家庭で考えてほしいと思います。ちなみに、私の元部下のタイ人女性はほとんど料理をしません。みんな屋台やコンビニをフル活用しています。イギリスでも日本人に部屋を貸すと台所が汚れるからいやだという話を聞いたこともあります。女性が家できちんと料理をするのは決して世界の常識ではないかもしれません。  古来、日本は海外からの文化を融合して独自の文化を作ってきました。古くは中国から、近代では西洋から文明を輸入してきました。今こそゆるい東南アジアの人たちの文化を見習って、本当の幸せとは何かを自分で考えてみてほしいと思います。日本人の持っている勤勉さを全て否定するつもりはありませんが、メリハリをつけて「ちょっとだけ」見直して快適な生活をめざしてはいかがでしょうか。