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2012年8月1日
繊維トレンド7・8月号 2012 No.95

■特別レポート

チャイナプラスワンの新興国ビジネス:インドネシア

寒川 雅彦 繊維調査部長

 日系繊維企業の中国生産は、2010 年に入ると人件費の高騰や労働力不足などを主因に、モノづくりが難しくなってきた。中国一辺倒の危機感からチャイナプラスワンが叫ばれて久しいが、わが国にとって中国に勝る国・地域は出現していない。東南アジア各国に焦点が集まっている中で、ここ2、3 年、再び、インドネシアへの注目が高まっている。インドネシアの現状と進出する上でのリスクについて考察してみたい。

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■ファイバー/テキスタイル

下期の東南アジア 合繊原料・製品市況を読む ―欧州情勢への警戒感強く神経質な動き続く―

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)世界経済に下振れリスクの漂う中、引き続き気迷い商状を引きずったまま、神経質な動きとなる。
原油・ナフサ高値圏で神経質な値動き続く
合繊原料世界的な景気減速不安で下した放ばなれリスクも
合繊ファイバー総じて弱含み
(2)アジア主要国の合繊産業近況
韓国 一部に減速感
台湾中台関係は経済優先で安定維持
中国 安定成長へ正念場
タイ2011 年は「想定外」の洪水被害、ほぼゼロ成長
マレーシアブミプトラ政策で苦悩、長期政権苦境
インドネシア内需堅調で今年も6%台の成長見込む。株価も最高値更新
インド減速、頼みの内需失速、極まる腐敗・高まる不満

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世界の繊維品貿易動向 ―2011 年の世界の繊維品貿易は過去最高を更新―

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任部員 鍵山 博哉

【要点(Point)】
(1)2011 年の世界の繊維品貿易額は過去最高を更新する見通し。
(2)2011 年主要国の繊維品輸出は、タイを除き、いずれも前年比2 桁増の伸びとなった。中国に加え、ベトナム、バングラデシュなど低コスト国が好調な伸びとなった。
(3)2011 年アジアからの輸出は、従来の主力市場である欧米向けに加え、域内貿易も拡大している。これは、近年急速に進んでいる同地域でのFTA ネットワークの拡大が寄与しているとみられる。
(4)2012 年直近のアジアからの繊維品輸出は、欧米市場の需要冷え込みもあり、減少/鈍化している。

土木・建築分野への繊維・テキスタイルの応用

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲 東レ株式会社 繊維加工技術部 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)自然環境の維持と災害防止を目的に、ジオテキスタイルと称する繊維の土木分野への用途開発が進んでいる。土壌の地盤安定、補強、埋立地保護、浸食防止などに利用される。
(2)建築物への繊維の応用に関しては、コンクリート補強、ルーフィング、ハウスラッピング、壁紙、膜材構造体などの普及が広がっている。
(3)建築用テキスタイルも単なる物理的補強から、透湿性、遮熱、電磁波防止などの機能付与並びに快適性維持の方向に改良が進んでいる。さらに、最近では、インテリジェント化、スマート化のような複合的機能も追求しつつある。
(4)機能向上、機能複合化のためには、異材料・異素材との複合化も含め、異分野・異業種との連携が重要である。

欧州における2013 年春夏の生地と2013/14 年秋冬の 糸のトレンドと日本と異なる新しい技術開発の流れ

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』(World Textile Publication Ltd. 発行) 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)2013 年春夏の生地トレンド:色についてはいつもなら好まれる自然なパステル調が少なく、蛍光ピンクをはじめ人工的なハッキリとした強い色が色の売れ筋の上位に入っている。目付についてはボリューム感があっても軽く、重さを感じさせない、包むような服となる生地、素材としては高級天然素材に化合繊をブレンドすることで軽い夏素材を提案している。
(2)2013/14 秋冬向け開発の核心は、光沢、房やループ、とりわけメランジなどのファンシーヤーンで、中心となる色柄はピンク、イエロー、グリーン、パープルの花柄だ。春夏に比べてやや落ち着いた自然志向の色調となっている。
(3)欧州の債務危機で景気の低下ないし停滞が懸念されるが、それに対してクラシックに回帰するのではなく、イノベーションや差別化で積極的に不安を乗り越えようとする動きが見て取れる。
(4)このようなファッション業界の底流には、スイスを中心としたケミカル企業の開発部門が新しい角度から繊維分野に新技術を紹介して、地場の繊維企業との連携を進めている動きがあり、その一端についてヨーロッパでの最近の情報をお届けしたい。

■縫製/アパレル

日本ニット産地の中国進出(新潟県五泉産地のケース) ―中国人デザイナーを起用した日中コラボレーションブランド―

事業開発研究所株式会社 代表取締役 島田 浩司

【要点(Point)】
(1)日本の産地の海外進出は、事前計画こそ重要
(2)中期計画が、事業の決め手
(3)メディア露出が、ブランドの価値を決める
(4)展示会の目的を明確にし、目的達成時は、一気に仕掛ける

H&Mパリ市内店の商品から想定される製品の設計過程 

信州大学 名誉教授  繊維学部 創造工学系 (同大学院工学系研究科)特任教授 大谷 毅  杉野服飾大学 服飾学部 教授 矢野 海児

【要点(Point)】
(1)H&M パリ市内店で収集した試料(商品)から推察した商品設計過程は、単品SKU(最小在庫管理単位)の設計というよりも、SKU の組合せの設計であり、到達点は情報処理システム設計との融合にある。設計主体の設計チームを核とし、サプライヤーも組み込む設計ネットワークを形成し、シーズンごとに50 万点の組合せの設計を行う。熟した統合データベースが不可欠である。
(2)①コア・ベーシック・定番群と②トレンド・ファッション・変番群に大別すると①群が多い。fast とは早い、流行を追うよりは、むしろ新鮮を意味する。
(3)fast の意味は、展示会なし見込生産に加え、設計の前倒し(front-loading)にある。前倒しで生じる混乱は商品センターがカバーし、店舗の商品構成(出荷順序)はPOS に従い商品センターで決まると推定する。

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中国の縫製業の現状と展望 ―マツオカコーポレーションの動向と共に― 

株式会社フランドル 上海事務所 所長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)中国は世界最大の輸出国で、繊維製品の輸出も世界最大。衣類に関しては輸出単価が年々高くなってきている。
(2)マツオカコーポレーションは、中国を拠点として縫製業を営む業界のリーディングカンパニー。事業の主体はOEM / ODM 事業。
(3)中国の人件費・加工賃は上昇しているが、中国を拠点とする日本向けの縫製業にとって、中国にはそれを補って余りある魅力がある。
(4)現在の中国の衣類生産は、華東地区、華南地区の沿岸部が中心だが、今後少しずつ内陸部に移っていくと見られる。
(5)チャイナ・プラス・ワンの東南アジア、南アジアの日本向けの縫製業の大きな強みは、関税の優遇制度、人件費・加工賃の低さである。

■小売/消費市場

2012 年春開業の新商業施設比較分析 ―新しいマーケットトレンドの兆し―

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)今春、首都圏に続々と新しい商業施設が開業した。いずれも買い回り品、専門品中心の構成で、東急プラザとダイバーシティ東京はヤング対象、渋谷ヒカリエはアダルト対象のテナント構成となっている。
(2)ヤング対象に、ガーリー系、トレンド系のショップと雑貨をバランスよく組み合わせ、「おもはらの森」で憩い空間を提供する東急プラザ。
(3)観光客を対象に、ガンダムとファストファッションのラインアップを前面に打ち出したダイバーシティ東京。
(4)アダルト対象に、バラエティー豊かな雑貨と魅力の高い食品でリピーターが期待できるのが渋谷ヒカリエ。

■新市場/新製品/新技術動向

シリーズ 高齢化社会と繊維 第4 回 介護用品分野のパイオニアとしてさまざまな商品を長く世に送る 大倉産業株式会社

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)大倉産業は大正期に創業。ゴム引きの布の製造・販売からスタートし、常に「防水」が同社の製品開発の主軸にあった。
(2)1980 年代までにビーズパッドや失禁用パンツなどの介護用品を開発、このジャンルのパイオニアとなった。
(3)製品には機能性素材が多く使われている。ただし、商品はロングランとなっても機能性素材の寿命が短いのが悩みである。
(4)大倉産業は、今夏「オークラ ライフパートナーズ」となって再スタートを切る。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

特恵関税の適用除外

日本化学繊維協会 理事 杉原 克

 2013 年4 月1 日より、中国から輸入されるレーヨン・アセテート長繊維糸に対する関税率が、現行の3.2~5.28%から4.0~6.6%に引き上げられる。  これは特恵関税の適用が除外されるためである。特恵関税制度は、開発途上国の経済発展支援のために、先進国が与える優遇策のこと。輸入関税をゼロまたは低く抑えることで、対象国からの輸入を促進し、その国の経済発展を後押ししようという制度である。

■統計・資料

Ⅰ.主要短繊維糸・織物の相手国別輸入統計 Ⅱ.主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計