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2005年5月1日
繊維トレンド5・6月号 2005 No.52

■特別レポート

これからの日本の繊維産業政策

経済産業省 製造産業局 繊維課長 宗像 直子 

 本日は日本の繊維産業の政策についてお話させていただきます。私は昨年12月21日に着任しまして、初めて繊維産業を担当することになり、現在少しずつ産地を訪問したり、お話をお聞きしたりして、繊維産業がどんな課題を抱えているか、どういう対策が効果的なのかを考えているところです。こちらから一方的にお話するというよりも、みなさんと議論させていただいた方が、私にとっては勉強になると思います。ともかく折角の機会ですので、これまでに考えたことをお話させていただきます。話の中心は大きく2つになります。1つは「日本の繊維産業の国際競争力強化のための方策」、もう1つが「国際分業をめぐる論点」です。

日本の繊維産業に未来はあるか

一橋大学大学院 商学研究科 教授 伊丹 敬之

 今日の講演のタイトルは、敢えてちょっと刺激的な『日本の繊維産業に未来はあるか』にしました。こういうタイトルに設定したら、結論として「未来はある」って言わなきゃいけないに決まっているわけですよね。しかし、このタイトルは私が決めたのではなくて、サジェスチョンがあって、2つの案が提示されました。『日本の繊維産業のこれからの課題』というのと、もうちょっと刺激的に『未来はあるか』というのと、どちらがいいでしょうかと。本のタイトルをつける時もそうなのですが、私のような性格の人間にそういう質問をするのは、すでにその答えを読んでおられるわけですね。もちろん私としては、刺激的な方でいこうと。

東レの新素材・新製品開発について

東レ株式会社 取締役高次加工生産担当 大河原 秀康

 私は繊維高次加工、テキスタイル、それから繊維の非衣料関係の新技術・新製品の開発、ならびに国内外テキスタイル関係会社の技術担当をしております。本日のテーマは「東レの新素材、新製品開発について」です。まずは、東レ合繊クラスターと技術分科会、それから東レの技術開発体制、ならびに技術開発の考え方について簡単に紹介しましてから、その東レ合繊クラスターの技術分科会で取り上げました6つの先端素材、技術など具体的にご報告させていただきます。

■海外動向

中国の"繊維力" -内側から見た繊維事情-  第2回 ”繊維力”の実力とその背景 

東レ株式会社 専任理事 御法川 紘一

【要点(Point)】
(1)中国の繊維産業はもともと地場産業として発展した。シルクロードの出発点の絹織物産地の浙江省は現代になって合繊織物の世界の中心地へと変貌した。
(2)繊維の競争力は、地方のコスト競争力が抜群であり、20¢/mタフタ、1000円パンツが世界を駆け巡った。
(3)繊維産業は時には「チャイナドリーム」を実現する。これを追い求めてテキスタイル産業は更に発展すると思われる。

シリーズ 「実践 中国ビジネスの果実と毒…中国ビジネス成功の秘訣」  第7回 知っておきたい中国ビジネス環境の”今”

中国ビジネス研究所所長 中国弁護士 馬 英華

 2004年の中国経済は、「宏観調控(マクロコントロール)」に力点がおかれ、政府としては懸命に経済過熱抑制に努めた。  それでも外資の対中投資額、貿易取引額、国内不動産投資取引額などの高成長が続き、中国経済が一挙に世界経済の主役の一角を占める足場を固めた年になったといえよう。貿易総額が前年比30%増の1兆1,000億ドル(1年間で2,500億ドルも増加)となり、日本を抜いて米国、ドイツに次ぐ世界第3位の貿易大国となった。  日本にとっても米国に代わって中国が最大の貿易相手国となった。  外資の対中投資は、2004年11月末で契約額1,350億ドル、(前年比34.4%増)、実行額575億ドル(前年比22.1%増)であり、史上最高を更新するのは間違いない。  これにともなって貿易総額に占める外資系企業の割合は60%近くになるとみられる。  外貨準備高は日本の約6,500億ドルに次いで、世界第2位の約5,000億ドルとなった。  こうした状況を象徴するかのように、年末には、発足して20年足らずの中国聯想集団が世界最大かつ100年の歴史を持つ業界老舗IBMからパソコン事業を12億5,000万ドルで買収するというニュースが飛び込んできた。  該社CEOの楊元慶氏は、現在40歳。既に36歳の若さでCEOに就任していた。  英国留学経験を持つ楊氏のような欧米留学組が今、急速に中国各界指導者層として台頭している。  外見は中国人の顔つきや肌の色をしていながら(外は黄色)、内面は欧米人のような意識、価値観、ビジネス感覚を持つ人たち(中身は白い)という意味で、彼らは'バナナ族'と呼ばれている。彼らの行動様式の特徴は、ドライで決断が早く、彼らが持つ国際的な人脈を最大限に活用しつつ、その中で欧米流のビジネス感覚で意思決定することにあり、聯想のIBMパソコン部門買収はまさに、'バナナ族'の特性がよく現れたケースだと言われている。

ATC執行と WTO新ラウンド

日本化学繊維協会 業務調査グループ 国際担当 主任部員 中村 巌

ATC(WTO繊維協定)の昨年2004年末での失効とWTO新ラウンドとの関係を、 (1)『イスタンブール宣言』とATC失効およびWTO新ラウンドでのATC失効(ポストATC)問題への対応 (2)欧米での中国からの繊維品輸入の急増と、欧米による対応(対中繊維特別セーフガード措置、反ダンピング措置等) (3)WTO新ラウンドにおける繊維品を含む非農産品の市場アクセス(NAKA)交渉の状況 の3つに分けて、下記に纏めてみたので、ご参考になれば幸いである。

米国から見たポストATC時代の繊維貿易 

日本貿易振興機構 輸出促進課 課長 木村 誠

【要点(Point)】
(1)繊維協定の失効により、世界貿易はこれまで相対的に優遇されていた中南米、中東欧・北アフリカ諸国から、中国、インドへシフトしていく。
(2)欧米各国の繊維貿易の主役は、OPT貿易を行う繊維メーカーから、サプライチェーンを重視する大手の小売業者へ交替していく。
(3)日本の繊維産業の強さの源泉である生産管理、高い技術力が中国の生産力と協業していくことが益々求められている。

シリーズ 「ファッション・リテイリングの最新動向」  第5回 成功ビジネスモデルのトレンド 

株式会社小島ファッションマーケティング 代表取締役 小島 健輔

【要点(Point)】
(1)今や、IT業界やファイナンス業界をはじめとして、ビジネスモデル開発型の起業や事業開発が常識であるが、繊維ファッション業界はSCM構築を核としたサプライサイドからのビジネス開発はみられるものの、セールスサイドからの開発を含めて全般にその開発はあまり進んでいない。
(2)ファッション業界におけるサプライサイドからのビジネスモデル開発はこれまでSPA化の流れの中で生産物流のアウトソーシングによるコストダウンが主流であり、あらゆるインソーシングは、コストアップにつながるので排除するという考え方が一般的であったが、2002年以降、世界的に素材市況がタイト化する中で、キーデバイス(基幹部品、つまり素材からの差別化など)を核としたインソーシング戦略が再評価されつつある。
(3)セールスサイドの革新は、サプライサイドの革新なくして成り立たない。また逆に、サプライサイドの革新もセールスサイドの革新を欠いては極めて不完全なものになる。この両輪が連携することが革新ビジネスモデルの開発に不可欠である。
(4)上っ面のテクニカルな次元のモデル開発だけでは中長期的な企業の成長にはつながらない。戦略構想は、サプライサイド、セールスサイド、労務サイド、ファイナンスサイド等の各面からみて、成長性、収益性、継続性を検証した総合戦略として組み立てるべきものである。

■国内動向

ユニバーサルファッションの課題と問題点 

有限会社シナジープランニング 代表取締役 坂口 昌章

●「ユニバーサルファッション」は、一時期ファッション業界の注目を集めながら、現在はあまり関心を持たれていない。その原因の一つは、「ユニバーサルデザイン」という思想を正確に理解しないまま、時代のトレンドとして「ユニバーサル」を扱ったことにあるのではないか。 ●全ての人に使いやすい「ユニバーサルデザイン」という思想は、ある意味でファッションと対立する概念である。「ユニバーサルファッション」の第一歩はきめ細かいサイズ展開とされたが、それはユニバーサルデザインという問題ではなく、日本の既製服が抱える問題点であった。 ●民族衣装、Tシャツ、ジーンズといった分野は、既存の洋服よりもユニバーサルデザインの思想を持っている。こうした研究も不可欠だろう。 ●バリアフリーとユニバーサルデザインは全く異なる概念であるにもかかわらず、「バリアフリーは古い。これからはユニバーサルだ」という誤解が一般化し、混乱が生じた。今後の課題は、「ユニバーサルウェアの開発」と「バリアフリーのファッション商品開発」である。

生活者の気分 ・・・生活者の気分を把握し、時代の流れをつかむ・・・

伊藤忠ファッションシステム株式会社 情報フォーラムチーム チーム長 小原 直花

●経済的には一時期の後退局面を抜け、ようやく明るい兆しが見えてきたものの、まだまだ閉塞感が漂っている。生活者は、「楽しい」「自由な」気分を基本に持っている。 ●今を引っ張っている気分は、原点を見直す(感情と意識の有り様)もの。「やさしい」「ぬくもりがある」など、人としてあるべき姿を改めて考えている様子がうかがえる。 ●「品のある」「知性が感じられる」に注目。話題のモノ・コトの中に、この気分を満たすものが確実に出てきている。生活者の気分を把握することは、次なるニーズを発見するヒントになる。

■新製品・新技術動向

欧州向けカーテンテキスタイルの拡販

東レ株式会社 インテリア事業部 内装資材課 ホームインテリアグループ 宇田 弘蔵

【要点(Point)】
(1)住宅着工件数の減少、安価な海外からの縫製品の流入により日本国内のインテリア市場が漸次縮小していく中、打開策として新規市場を開拓すべく、インテリアの本場たる欧州をターゲットとした輸出ビジネス企画。
(2)欧州市場において競合する中国・インド・トルコ等対比、高コストであるが高品質の日本品を輸出すべく、病院・ホテル等への物件ビジネス、いわゆるコントラクト市場に向け、難燃性等の高機能付与カーテンの開発・販売特化集中ワーク。
(3)当社G海外各社と連携しての商品の短納期供給システムを構築し、事業の安定的な拡大を目指す。
(4)H18年度には年間売上24億円規模を目指し、インテリアテキスタイル輸出ビジネスとしての基盤を確立する。

■知りたかった繊維ビジネスのキーワード

FTAと原産地規制について

日本化学繊維協会 業務調査グループ主任  鍵山 博哉

■統計・資料

合繊主要4品種の需給動向

日本/韓国/台湾/アメリカ/中国/インドネシア/タイ