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2022年9月20日
経営センサー9月号 2022 No.245

■産業経済

円の価値低下と「人への投資と分配」をあらためて考える

産業経済調査部長 チーフエコノミスト 福田 佳之

Point
(1)円の価値が低下している。円安の背景には、これまでと異なって財・サービス貿易収支の黒字が縮小するなどで円買いの圧力が低下していることがある。
(2)一方、円安の日本経済に及ぼす影響は依然としてプラスだが、日本企業の海外シフトなどでその影響は今後低下する可能性が高い。
(3)円の価値低下は長期にわたっているが、これは日本の立地環境が改善に向かったにもかかわらず内外企業が見向きもしなかったことが影響している。産業振興がうまくいかず、円を買う要因に乏しかった。
(4)岸田政権は「人への投資と分配」を優先課題としている。日本では、公的な職業訓練費など人への投資が海外と比べて低く、依然として人への投資を強化する余地がある。また、人的資本の情報開示については緒に就いたばかりであり、その効果を期待するのは時期尚早であろう。
(5)ただし、人への投資不足は産業振興におけるボトルネック要因と位置づけるべきだろう。政策の軸足は事業創出と産業振興に置くべきであり、人材投資促進が最初にあってはならない。

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■世界情勢

高まる米国の景気後退リスク ―コロナ禍から急回復も、インフレ高進に伴う金融引き締めから景気後退リスクが上昇―

株式会社ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

Point
(1)米国経済は新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年春先に大幅に落ち込んだものの、財政政策や金融政策などの政策効果もあってV字回復を果たした。
(2)サプライチェーンの混乱に伴う供給制約やウクライナ侵攻に伴う資源高などから、インフレがおよそ40年半ぶりの水準に上昇した。
(3)景気よりインフレ抑制を優先する姿勢を明確にしたFRBの積極的な金融引き締めから、景気後退リスクが上昇している。
(4)来年にかけて景気後退に陥る可能性は否定できないものの、良好な家計の状況などから深刻な景気後退は回避可能だろう。

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■技術・業界展望

工作機械業界の現状と課題<後編> ―日本の工作機械メーカーが競争力を保つには―

チーフアナリスト(産業調査担当) 永井 知美

Point
(1)本稿は、3回に分けてお送りする「工作機械業界の現状と課題」の後編である。
(2)前編では日本の工作機械メーカーが性能やサービス面で世界最高水準にあること、中編では世界の工作機械業界で日本がどのような立ち位置にあるのかを概観した。
(3)前編では日本の工作機械メーカーが性能やサービス面で世界最高水準にあること、中編では世界の工作機械業界で日本がどのような立ち位置にあるのかを概観した。

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■視点・論点

コロナ禍をめぐる「国と地方」そして公共の役割を考える

明治大学名誉教授 青山 佾

1.コロナ禍の下でなぜ都道府県知事が登場する機会が多いのか
感染症に関する基本的な法律は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」である。以前から存在する法律だが、今回のコロナ禍の中で2021年に改正された。

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■マネジメント

職場におけるパワーハラスメントの課題と対応策 ―パワーハラスメントの基礎知識:管理監督者が留意すべきポイント

ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社 代表 山藤 祐子

Point
(1)世の中に○○ハラが氾濫しているが、職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)の定義を正しく理解する。
(2)パワハラと指導の違いを理解し、パワハラと思われない指導方法について知る。
(3)パワハラを防ぐために、企業の対応策、管理職の対応策を理解する。

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■ヒューマン・ディベロップメント

日本の国難ともいわれる、人口減少社会の問題は何か ―データで読み解く未婚化のワケ―

株式会社ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子 聞き手 株式会社東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長 宮原 淳二

Point
(1)自治体は合計特殊出生率(TFR)ランキングの高低を少子化対策の成果指標としている向きがあるが、そもそも未婚女性が域内外を移動している影響を理解すべきである。
(2)コロナ下、東京から移住するニュースを目にするが、東京圏は、大阪圏や名古屋圏に比べ人口集中において圧倒的である。テレワークできる環境整備が大企業を中心に整備されていることで、より顕著になってきている。
(3)地方で人口減少に歯止めをかけたいのであれば、生まれてきた子どもへの対策は重要であるが、未婚女性の就職期での多大な流失状況を鑑み、地元企業一丸となって労働問題を主軸に考える必要がある。そのためには、不寛容な価値観から脱却する必要がある。

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■TBRカナリアレポート

新設されるこども家庭庁の使命と課題 ―真の子どもファースト実現の担い手として内外から期待―

2023年4月に、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」が内閣府の外局に新設されます。子どもに関する取り組み・政策を社会の中心に据える「こどもまんなか社会」の実現を目指し、少子化や貧困対策など子ども関連施策を一元化して担う機関と位置づけられています。22年6月に成立した「こども基本法」においても、子どもの人権の保障と、子どもの意見を政策に反映するために必要な措置を講じることなどが定められています。

■ピックアップちゃーと

日本の宇宙関連予算は2021年以降急拡大 ~世界で急成長する宇宙産業を背景に衛星コンステレーション関連を強化~

産業経済調査チーム

■お薦め名著

『落語に学ぶ粗忽者の思考』

立川 談慶 著

■ズーム・アイ

「はじめて」を受け入れる懐

人材開発部 福田 貴一

今は「東京ドームシティ」という昔の「後楽園」、そこは私にとって数多くの「はじめて」を経験させてくれた場所です。昨年末、エリア内の東京ドームホテルで会合があって久しぶりに足を運びました。高層階からは夜景が広がり、ドーム球場の屋根が眼下にありました。