close

2010年9月1日
その業務必要ですか?
コンサルタント
森本 有紀

 上司に対して、「その業務必要ですか?」と聞くには度胸がいる。その台詞を発して上司から嫌われることもあるが、この台詞は様々なことを気づかせてくれる。  勇気を振り絞ってその疑問を俎上に載せると、上司やその業務が必要だと感じている人との対話が生まれるのだ。上司と担当者では保有している情報量が違う。担当者目線で不要と感じても、上司の経験から必要とされるものや、戦略上重要な位置づけとなる業務もある。それら情報を共有するのだ。単なる作業指示ではなく、業務の必要性を含めた業務のバックグラウンドや目的を、上司・部下で業務の全体像を共有するのである。不要と思われた業務であっても、全体像が分かれば、価値や意義が変わる。目的に対する理解が相互で深まれば、目的達成のための手段や方法、内容を深堀りできる。その取っかかりとしての、「その業務必要ですか?」である。  複数人やチームで業務を進めるには、その業務の目的や納期、ゴールイメージ(どのような状態で業務を完了するか)を共有する必要がある。関係者が同じものを目指さなければ、よい仕事ができないからである。  チームで目的を深く共有することで、相互の動機付けにもなり、連帯感が生まれる。コミュニケーションを重ねることで業務の具体性が増し、着手しやすくなる。業務の目的やゴールが変えられないものであるのに対し、手段や方法、内容は可変であることが多い。目的にさえ合致していれば、ゴールさえ達成できれば、どのようなアプローチであっても構わない。予算などの制約条件はあるものの、納期も交渉次第で変更できることも多く、各人が進めやすい形に変容させることができる。  業務の指示に関する上記のような上司・部下間、チーム間のコミュニケーションは、日々行われていなければならないことであるが、残念ながら、そうでない組織も多いのではないだろうか。作業指示だけ出して、出来上がったものに文句を言い、部下の業務の出来栄えに気を揉む上司や、安請け合いして、締め切り間際に業務を急増し、何度もやり直しを求められてしまう部下、この記事を書きながら反省することばかりではある。  丁寧なコミュニケーションを重ねれば業務品質の向上が図れ、更に具体的な業務指示は、効率アップにも寄与すると筆者は信じている。  業務効率の向上には、業務に必要な知識・技術の習得、IT スキル向上、タイムマネジメント技能の習熟など、考えられる方法は山ほどあるが、「指示 受け・指示出し」の際のコミュニケーションの改善は有用だろう。  「その業務必要ですか?」は過激な台詞なだけに両刃の剣だが(その理由は自明なのであえて記載しない)、その剣を振るうべきタイミングはあるはずだ。たまには勇気を振り絞ることを勧めたい。上司との丁寧な対話は、全体を俯瞰する経験ができ、担当者として判断次元が一段上がるからだ。それに万が一、その作業が不要となれば、一担当者としてはそれだけでもハッピーである