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2016年11月4日
新産業革命への対応は本物か
チーフエコノミスト
増田 貴司

 「あらゆるものがインターネットとつながる IoT 時代に、自分の業界になじむ IT(情報技術) と人工知能(AI)の活用方法を教えてほしい」「同業他社の IoT の取り組みを知りたい」こんな 質問を時々耳にする。だが、こうした業種の枠にこだわる発想では、新産業革命の時代を生 き残ることは難しいだろう。  IoT や AI がこれほど騒がれている理由は、これらが業界の垣根を越えた連携と融合を促し、 異業種間の競争とコラボレーションを活発化させ、既存の事業や産業にかつてない変化が起 きることにある。  例えば、IT の進化で異分野への新規参入のハードルが下がったことを背景に、米国の IT 企業が続々と従来の枠組みを飛び出し、自動車、ロボット、物流、農業など様々な産業に進 出し、既存の業界構造・事業モデルを破壊しようとしている。  今企業に求められる行動は、迫り来る産業の大変化を見据えて、自分たちが何を手掛け れば生き残れるのかを真剣に考え、将来の競争力の維持・強化のための仕込みを行うことだ。 新たな環境に対応して自社の事業定義を見直すことや、IoT・AI を活用すれば今までできなか ったどんな新事業ができるかを考えることである。  いずれにせよ、既存の業界・事業の枠組みを越えた動きと異分野とのコラボレーションが 不可欠であり、これらの動きの有無で企業の新産業革命への対応が本物かどうかを判定す ることができる。  本物の IoT の取り組みは、従来の枠組みを超えた発想のできない多数派の目から見れば、 「それを当社がやる意味がわからない」「戦線を広げすぎ」などと受け取られ、理解されにくい。 この難関を乗り越えて将来への布石が打てるかどうかが、数年後の企業の盛衰を左右する。 (本稿は、2016 年 11 月 2 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)