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2012年12月25日
日本の環境配慮型都市の弱点
チーフエコノミスト
増田 貴司

 今、スマートシティー(環境配慮型都市)が脚光を浴びている。IT(情報技術)活用 して市民生活の質や利便性を高めながら、エネルギー効率の改善や低炭素社会の実現を目 指す都市のことだ。全国で始動中のスマートシティーの官民連携プロジェクトは、延べ 200 超の都市に及ぶという。  日本のスマートシティーへの取り組みは欧米より遅れていたが、東日本大震災以降、再 生可能エネルギー普及策の進展に伴い、一気に活発になった。電機、情報通信、自動車、 住宅、不動産、建設、金融など多様な業種の企業がスマートシティーに関する組織を立ち 上げ、事業の創出を目指している。  環境技術、省エネ技術といえば日本のお家芸であり、日本はスマートシティー関連の技 術力では世界最高の水準にある。さらに政策の後押しも始まった。これを受け、「スマート シティーは日本の成長戦略の一つになりうる」、「日本の新たな輸出品として新興国に売り 込める」といった期待が高まっている。  しかし、日本の取り組みの現状は、技術や実証実験では先行しているが、事業化に向け た動きは遅れが目立つ。収益化のビジネスモデルは見えず、産業化を主導する事業主体も 不明確なままだ。  日本のスマートシティー提案の最大の弱点は、電池や発電所といったモノの話ばかりで、 街や人々の生活がどのように変わるのかを示していない点にある。モノ売りにとどまり、 ビジョンや生活スタイル、具体的な解決策等を提案できていないのだ。  世界のスマートシティー開発をめぐる競争で日本型を売り込んでいくためには、モノで はなくコトを売る発想への転換が欠かせない。日本には深刻な公害問題を乗り越えてきた 経験がある。そうした経験の輸出にモノ売りが付随していくような提案を目指すべきだ。 (本稿は、2012 年 12 月 21 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)