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2006年10月1日
学校で教えてくれないこと

 団塊世代が次々と定年退職を迎える「2007年問題」や、少子化による労働人口の絶対数減少が予想される中で、いかに人材を確保・育成していくかが業界を問わず大きな課題であり、我々の調査案件でも人材育成に関するテーマが目立つようになりました。その一方で、新聞記事などでは近年の学生の基礎学力低下を指摘する報道が目立ち、人材の量と質の両面で問題を抱えているというのが共通認識のようです。しかしながら、量の問題は分かりやすいとしても、質の問題については額面どおりには受け取れないところもあります。  質の低下を懸念する材料として挙げられることが多いのは基礎学力の低下ですが、実際に「産業界で求める人材像」の類として近年実施された調査結果を見ると、重視する資質の中で欠けているものとして「コミュニケーション能力」「最後までやりぬく意志」「独創性」「リーダーシップ」などといった、いわゆる「ソフトスキル」に関するものが多く含まれていました。ここで2つの大きな問題があります。ソフトスキルをどう身に付けさせるべきか、そしてそれをどう評価するかです。 知識は学校で教えてもらえますが、ソフトスキルは学校だけで教えられるものではありません。それまでの個々の人生経験すべてがソフトスキルの形成にかかわるといっても大げさではないでしょう。産業界から教育界への要望としていくら求める資質をピックアップして提示したところで、教育界でできることはその一部に過ぎないのです。また、基礎学力などの知識はスコア化して客観的に優劣を判断することは可能ですが、ソフトスキルは客観化が困難で、評価者の主観に判断を依存せざるを得ません。  ソフトスキルをプロファイル化しようとする向きもありますが、これもやはり限界があるでしょう。結局のところ、ソフトスキルを判断するためには、評価者にそれ以上のソフトスキルが求められるというところに帰結してしまうのです。  ほんの数年前まで就職氷河期とよばれていたものが今や空前の売り手市場となり、企業が人集めに躍起になっている現状は、バブル崩壊後に就職活動を行った筆者には隔世の感すらあります。長く続いた不況の中で余裕のなくなった企業が、求める人材として即戦力志向を強めた結果、企業内で人材を育成するという視点が欠けていたとは言わないまでも、少なくとも外部にその過程をより多く依存しようとしてきた感は否めません。しかし、種を手に入れても世話をしなければ果実も実らないのと同じで、必要なところは個々に育成していかなければならないというところに立ち戻りつつあるのが現状です。求める人材のスペックを声高に叫ぶのはいいけれど、自社に適した人材になってもらうためには自社の努力も必要なのだということを、過去の反省も踏まえて企業は自問すべきではないでしょうか。