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2008年11月7日
【経済観測】 金融危機と世界同時不況下の日本経済を展望する
チーフエコノミスト
増田 貴司

・日本経済は後退色が強まっており、内外需とも推進力不在である。世界景気の持ち直しによる輸出の復調が今後の回復のきっかけになる。世界経済がこの先どの程度悪化し、いつ持ち直すかが、最大の焦点となる。 ・日本の景気が後退局面入りしたのは、サブプライム問題のせいではない。交易条件の大幅な悪化に見舞われた企業が設備投資にブレーキをかけたことが主因である。 ・企業部門は悪化方向にあるが、通常の景気後退期に比べて財務体質は健全である。また、設備、雇用、在庫等の調整のマグマはそれほどたまっていない。今後の世界経済減速という逆風に対する一定の耐久力を日本企業は備えている。 ・「100年に1度の金融危機」の影響により、世界同時不況の到来が避けられない見通しである。標準的な世界の成長鈍化シナリオを前提とすれば、日本経済は08年度、09年度と2年連続でゼロ%近傍の成長にとどまろう。 ・米欧のバブル崩壊後のバランスシート調整は長引き、今後数年は景気を下押ししよう。ただ、この間にも景気の循環的な緩やかな回復は訪れよう。 ・今回の金融危機は1930年型の大恐慌にはならないと予想される。中長期的な影響としては、FRBへの信頼感の揺らぎによるドル下落圧力に注意が必要である。 ・日本企業としては、世界同時不況の到来を前提に、守りの経営姿勢に転じるのは当然だが、この「冬の時代」に次の好況期のための備えをしておくべきであろう。重点的な研究開発の推進、海外市場の開拓、M&Aの活用などにより、将来に向けての強みの構築を進めることが望まれる。

【キーワード】

金融危機、信用収縮、世界同時不況、サブプライム問題、交易条件、原油価格の高騰・下落、生産調整、IT部門の在庫循環、企業の不況への耐久力、公的資金、資産デフレと実体経済悪化の相互悪循環、バランスシート調整、FRBの信認低下、M&Aの好機

PDF : TBR産業経済の論点 No.08-09(116KB)