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2011年5月11日
東日本大震災は日本の製造業に何をもたらしたのか
~ 3・11後のものづくりの課題 ~
チーフエコノミスト
増田 貴司

・東日本大震災の被災地は、基幹部品・素材の工場の集積地だったため、直接被害を受けなかった地域においても、これら部材を原材料として使うセクターで広く生産や経済活動に支障をきたした。 ・震災によって、日本の製造業のビジネス環境は構造的に悪化した。具体的には、(1)電力供給の制約、(2)法人減税の見送り、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加検討先送り、(4)大地震再来への備えと事業継続計画、(5)放射能汚染の影響、安全・安心の日本ブランド低下とインフラ輸出への打撃、などによって企業が日本に生産拠点を置く場合のコストとカントリーリスクが高まり、「ものづくり日本」のブランドが傷ついた。 ・新興国市場の開拓や立地分散のために、今後、企業の海外生産シフトが加速することは避けられない。しかし、東北・北関東に数多く立地する基幹部品・素材の工場に関しては、海外シフトを安易に進めるべきでない。東日本が基幹部材の「世界の工場」としての地位を失えば、地域の雇用が減少して経済活力が低下するばかりでなく、日本のものづくりが競争力を失ってしまう。 ・震災で生じた部品や素材のサプライチェーンの寸断が長引けば、世界のメーカーは日本製部品に依存することにリスクを感じ、代替調達先への切り替えを検討する。製造業の空洞化回避のため、国を挙げてサプライチェーンの修復を急ぐべきである。 ・持続的な雇用を生み出す産業が地域に育って初めて、復興が実現する。今回の国難を転機として東北・北関東を再生し、新しい日本を創ることを表明した復興ビジョンを早急に打ち出す必要がある。復興のシンボルとなるテーマを掲げ、内外から優良企業、優秀人材、投資マネーを呼び込むことが重要である。

【キーワード】

東日本大震災、基幹部材、部材産業の集積、サプライチェーンの寸断・復旧、ビジネス環境の悪化、カントリーリスク、電力供給制約、法人減税見送り、TPP、事業継続計画、放射能汚染、日本ブランド、インフラ輸出、海外生産シフト、空洞化、復興ビジョン

PDF : TBR産業経済の論点 No.11-05(417KB)