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2007年6月1日
経験から学ぶ力をつける問いかけ

 企業の現場では、知識や技能を継承するための様々な取り組みがなされているが、以前と比べてOJTの機会が減少していると聞く。このような環境においては、少ない学習機会をフル活用して仕事の質を高める能力が重要になる。  ここで、あるメーカーの営業系マネジャーから聞いた話を紹介する。その会社では、営業系の新人を生産工場に数カ月間配属し、現場のものづくりを肌で感じてもらうのだが、そのマネジャーが言うには「気のきいた新人は生産現場のキーパーソンが誰であるかを敏感に察知し、彼らとのネットワークを築いて営業部署に帰ってくる」そうである。  彼ら/彼女らは、自らの役割に気づき、工場でやるべきことを考えて行動に移している。単なる経験で終わらせず、経験を学びつなげる姿勢を見てとれる。  何とかして「気のきいた新人」を育てることができないだろうか。  キーパーソンと良好な関係を築いてくるよう指示するのも1つの解決策である。しかし、「気のきいた新人」なら自ら気づいてほしい。  では、どうすれば気づいてくれるだろうか。経験豊富な上司や先輩にとっては、答えを教える方が、時間的にも精神的にも楽かもしれない。しかし、考える癖をつけ、経験からより多くを学ばせることが、結局は本人の成長につながるのではないか。  求められる役割とそれを実現するために取るべき行動について考えさせる。そもそも、上司や先輩が答えだと思っているものが常に正しいとは限らない。現場の情報を多く持つ部下や後輩が適切な答えを持ってくることも多いと感じる。  経験から学ぶ力を育てる方法はいろいろあるが、私は気づきを促す問いかけをおすすめする。  ある3日間コースの研修では、1日の研修から何を学んだかをレポートにまとめ、翌朝提出してもらっている。初日のレポートに対して次のような返事を書いて、一人ひとりに渡した。「レポートに書いたことはあなたにとってどのような意味を持ちますか」「あなたが学んだことをどのように活かしますか」。すると、翌日のレポートでは、研修から学んだことを自分に引きつけ、目標設定をするケースが随分増えた。研修に限らず、日々の仕事経験の中で、問いかけて、考えて、答えて、・・・を繰り返すうちに、自らそのループを回すようになってくれればしめたもの。 現場百遍というが、何度現場に行っても、見ようとしない人には見えない。そこに何があるか上司や先輩が常に指し示すのではなく、問いかけることによって、部下が自ら問題意識を持って現場を見る姿勢、現場の経験から学ぶ力を伸ばすことができるのではないかと思う。