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2013年10月1日
いつも心に幕間(あい)を
コンサルタント
内藤 陽子

 近年、パワースポットと呼ばれる場所がメディアでよく取り上げられています。特に今年は、60年に1度の出雲大社、20年に1度の伊勢神宮の遷宮が重なり、ちょっとした参詣ブームです。その流れで、次の遷宮時の自分の年齢を考えれば今回はよい機会ではないかと思い、私も出雲、伊勢に詣でてきました。  伊勢神宮は、内宮、外宮、別宮など125ある神社の総称で、それぞれの敷地に祭られた神様の社殿が建っています。今回の遷宮は、伊勢神宮のメインである内宮の天照大神、外宮の豊受大神を新しく建て替えられる社殿にお引っ越しするものです。  私が訪れた7月初旬、内宮、外宮の新正宮は現宮のすぐ隣にいまだ建設中でしたが、塀向こうの完成間近の美しい木地の屋根を目にするだけでも、なんとも厳かな気持ちになりました。  ご存じの方も多いと思いますが、伊勢神宮の社は新御敷地と呼ばれる、同じ広さの敷地がだいたい隣にあり、交互に新しい社が建てられて、その度に神様のお引っ越しをします。今回、別宮も回りましたが遷宮は同じタイミングではないようで、別宮の神様たちの新御敷地はぽっかりとした空間としてそこにありました。  すぐ隣にある現在の社には、休日ということもあってひっきりなしに参拝者が訪れます。  初夏の濃い緑を背景に、白黒の玉砂利が同じ模様に敷き詰められた新御敷地の中心奥には、小さな祠(ほこら)がひっそりとたたずんでいるだけです。けれど、その何もない空間は確かに神様が次に住まう場所にふさわしい静謐(せいひつ)さがありました。  演劇で、一幕が終わり次の幕が開くまでの休憩時間を幕間といい、役者もスタッフも次の幕を最高の状態で開けるための準備をする時間です。例えるならば、現在のお社はお参りする人間のたくさんの思いを受けとめ続けている表舞台にあり、新御敷地は幕間にあると言えるでしょう。建物や宝物を新しくするだけでなく、土地を2カ所用意して片方ずつが20年かけて次への準備をしているというシステムに感心してしまいました。  スケジュールをたててそれをこなすことはできても、イレギュラーが発生したり、目の前に問題が発生したりしたとたんに焦ってしまうことがよくあります。余裕を持って仕事をすべきだと分かっていても思うとおりにはいかないものですが、常に頭の中の一部に、沈殿して凝り固まった思考をリセットした空間を用意しておくのは大切なことではないでしょうか。式年遷宮のように次への準備に20年かけることは現実的ではありませんが、少しでも良い仕事ができるように日頃からの準備はしておきたいものです。伊勢の別宮の浄化された空気からもらった幕間のような時間を、少しずつ貯金していきたいと思います。