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2013年6月1日
経営センサー6月号 2013 No.153

■今月のピックアップちゃーと

日本は技術で2兆円も稼いでいるって本当? ~製造業の競争力低下と技術貿易の黒字増加の謎~

■経済・産業

アベノミクス「3本の矢」今後の注目点

産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト 増田 貴司

【要点(Point)】
(1)本稿では、日本の景気の現状を概観した後、安倍政権の経済政策(アベノミクス)の現状とその効果について整理し、今後の課題や注目点について指摘した。
(2)今回は、通常の景気回復パターンとは違って、企業部門よりも先に家計の消費が回復した。この背景には安倍政権の政策がもたらした消費マインド改善がある。
(3)アベノミクス効果は「期待」だけでなく、既に実体経済を変えている。
(4)日銀の「量的・質的金融緩和」は、レジームチェンジを内外に印象づけ、市場の期待を上向かせることに成功した。「2年以内に2%の物価上昇率目標」の達成を信じる者は少ないが、今のところ日銀のインフレ目標は多くの人に歓迎されている。
(5)一方、日銀は「異次元緩和」の代償として、①長期金利が制御不能になるリスク、②「国が日銀に借金の肩代わりをさせている」と市場に受け止められる危険性の増大、③今後いざという時に講じられる金融政策の手段が乏しくなったこと、といった副作用に対処していくことが必要になった。
(6)「第2の矢」の財政政策は、今後「機動的」に減らしていくことが課題となる。信頼に足る財政健全化策を早急に打ち出す必要がある。
(7)「今後の景気や株価の動向は成長戦略次第」というのはウソである。成長戦略は短期の景気刺激策でもなければ、市場を喜ばせるためのものでもない。中長期的な潜在成長率を高めることが狙いだ。日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にするために必要な措置を本気で実行し、企業が日本における事業展開への自信を強めるような環境づくりを進めるべきだ。

PDF : 詳細(PDF:1,509KB)

■業界展望

【シリーズ「シェール革命」と日本企業の戦略(2)】 シェールガスからシェールオイルへ

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)天然ガス価格の低下は、開発業者の収益悪化につながっており、彼らはシェールガスの減産や権益の売却に動いている。また、収益改善のために、石化原料を多く含むシェールガスやシェールオイルの採掘にシフトしたり、液化天然ガス(LNG)のアジア向け輸出を模索したりする動きが出てきている。
(2)シェールオイルの生産は増加しており、米国エネルギー情報局(EIA)によると、2020年には281万バレルに達する見込みである。その結果、米国の中東からの原油輸入は減少し、2030年代には「脱中東」を果たすと見ている。その場合、中東情勢が不安定化し、エネルギー供給が混乱する恐れがある。
(3)米国からのアジア向けLNGの輸出は、液化設備の設置やパナマ運河拡張工事が完了する2010年代後半に開始される予定である。ただし、LNG輸出には米国当局の許可が必要であることなどから、米国がLNG輸出大国化する可能性は低い。

PDF : 詳細(PDF:1,346KB)

■視点・論点

『私』から見た日本マーケティング史 ―自分さがしに出た旅人はどこに行き着くのか?―

九州大学 ビジネス・スクール 客員教授 南京大学 ビジネススクール 客員教授 出頭 則行

はじめに 山口百恵が歌う「いい日旅立ち」は1970年代末から80年代初頭を飾るロングヒットとなり、多くの若者を自分さがしの旅に駆り立てた。ちなみに、この楽曲をテーマソングとして使用した日本国有鉄道(現JR)の旅行誘致キャンペーンは5年余にわたって続き、日本におけるメディア横断型プロモーションの先駆けとなった。

■マネジメント

【シリーズ企業と広報(1)】 100年先も健全な企業であり続けるために ―東レ広報30年の経験で学んだこと― コミュニケーションの改善は最重要経営課題

東レ株式会社 顧問 斉藤 典彦

【要点(Point)】
(1)企業はステークホルダーとの良好な関係を存立基盤としており、コミュニケーションの改善は最重要経営課題である。
(2)企業広報とは、企業が経営活動の環境整備のために、目的的かつ戦略的に行う“社会”とのコミュニケーションである。
(3)企業実態の改善に取り組みつつ社内外に共感を醸成し、企業イメージ向上に取り組んだ筆者の経験からの学びをつづる。

■環境・エネルギー

三陸復興国立公園の目指すもの

京都大学 名誉教授 地球環境戦略研究機関(IGES) シニア・フェロー 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)本年5月には震災後の東北地方太平洋岸の自然公園のうち、陸中海岸国立公園などを中核として三陸復興国立公園が創設される。
(2)これは、新たな国立公園を核とし、自然環境の保全と地域活性化の基盤を創出し、森・里・川・海が育む自然とともに歩むグリーンな復興を目指すものである。
(3)復興に向けた具体的な取り組みとしては、長距離歩道(みちのく潮風トレイル)の整備と復興のシンボルともなる森づくり、農林水産業や地域との協働による滞在型のエコツーリズム、防災との連携と津波経験の継承、などがある。

■アジア・新興国

日本企業にとっての中国市場の重要性 ―工場と市場の区別―

九州大学 ビジネス・スクール 教授 村藤 功

【要点(Point)】
(1)産業革命までは中国とインドで世界のGDPの半分を占めてきた。長期的将来、中国とインドで世界経済の半分を占めてもおかしくない。
(2)日本はバブル崩壊以降ゼロ成長だが今後も大した成長をするとは思えない。日本企業はアジアの成長に参加しなければならない。
(3)中国に問題があるのでベトナムやインドへ行けという説が最近強まっているが、人件費の安い国に工場を移せても中国市場を放棄することはあり得ない。
(4)遼寧省市場は一つの狙い目である。工場だった頃は大連が良かったが、市場であるなら瀋陽に拠点を置くべきである。

■人材

人材育成の視点 2013年度新入社員研修を振り返る

人材開発部長 小西 明子

【要点(Point)】
(1)2013年度研修での新入社員は、物分かりが良く手のかからない「ロボット掃除機」に例えられる。
(2)新入社員にとって会社はつまずいたり迷子になったりする段差や迷路満載の異文化世界。
(3)表面的な物分かりの良さに惑わされず、異なる文化について丁寧に説明し腹落ちさせることが、前向きに乗り越える姿勢につながる。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「のれん」 「マネタリーベース」

■お薦め名著

『選択の科学』 ―あなたの選択肢が寿命を左右する―

シーナ・アイエンガー 著 櫻井 裕子 訳

■ズーム・アイ

身近な好敵手を見つけよう

企画管理部 髙月 順一郎

先日開催された日本選手権水泳競技大会で、萩野公介選手が5種目で優勝するという、史上初の偉業を達成しました。彼は本来、個人メドレーの選手で、ロンドンオリンピック400m個人メドレーで銅メダルを獲得したすばらしい選手ですが、自由形や背泳ぎでも優勝したのです。