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2021年1月6日
広がるロボットユーザー
取締役 エグゼクティブエコノミスト
増田 貴司

 ロボット市場に構造変化が起こっている。これまでロボットは競争の激化や、少子高齢化を背景にした人手不足や人件費高騰などを受けて、自動化・省力化によるコスト削減を目的として取り入れられることが多かった。だが新型コロナウイルスが流行してからは、感染防止のため産業現場での人の密集や接触を回避するためにロボットを導入する動きが活発になっている。  また産業用ロボットを動かすには、事前に動作などを教え込む作業(ティーチング)がこれまで必要だったが、人工知能(AI)を使ってティーチングを不要にする技術も開発された。作業内容がその都度変わる倉庫や食品業界などの現場でも、ロボットを活用しやすくなった。  さらに、RaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)と呼ばれるビジネスも登場しており、ロボットを自社で所有しなくても利用できるようになった。システムの運用やメンテナンスは業者に一任し、リースやレンタル契約で必要な時に必要なだけ使える。これで重い投資負担に耐えられない中小企業にも、ロボット導入の道が開けてきた。  こうした変化によって、幅広い分野で従来とは違うタイプのロボットが使われるようになっている。市場が広がっているのは「きつい、汚い、危険」な作業を正確・迅速に行うロボットではなく、手作業に頼っていた搬送や組み立てなどの汎用工程で使われるロボットである。それらのロボットのユーザーは、自動車や半導体のメーカーとは違って、ロボットの活用に不慣れな企業が多い。  ロボット事業を手掛ける企業にとっては、こうした市場構造の変化に対応が求められる。個々のユーザーの困りごとに寄り添い、課題解決のための手段を提案することが重要な時代になった。 (本稿は、2021年1月6日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)