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2012年11月14日
「シェールガス革命」は日本の企業にチャンス
< 経済展望(下)>
シニアエコノミスト
福田 佳之

米国経済に好材料  米国は13年以降に減税の失効や財政赤字の強制削減で景気が冷え込むという「財政の 崖」問題を抱えている。しかし、中長期的に見ると、米国経済には好材料が存在している。 「シェールガス革命」である。  シェールガスとは、通常の天然ガス田よりも深いところにある泥土が堆積してできた 頁岩 けつがん の中に閉じ込められている天然ガスである。これまで北米など世界各地で豊富に埋蔵 されていることが知られていたが、コストの面で開発が難しかった。  しかし、00年代に入って、米国のベンチャー企業を中心に水平掘削や水圧破砕など一 連の工法を確立し、資源メジャーがこれらのベンチャー企業を買収してシェールガスの開 発を加速している。  この結果、米国の天然ガス価格は、欧州やアジアの価格と比べて半分以下まで低下して いる。そのため、採算の良いシェールオイルの開発やシェールガスの輸出の動きも出てき ている。また米国の化学企業は、シェールガスに含まれるエタンを原料とするエチレンプ ラントの建設計画を発表しており、自動車メーカーも天然ガス車の開発に力点を置き始め た。こういった米国製造業の国内回帰の動きは経済活性化と雇用創出をもたらす。  このようにシェールガスは米国経済に大きなインパクトを与えており、これらの変化を 「シェールガス革命」と呼ぶほどだ。 得意を生かして  シェールガスは日本で採掘されない。しかし、「シェールガス革命」の恩恵は、遠く離れ た日本企業にも及ぶ。天然ガスの液化設備製造は日系プラントメーカーの独壇場であり、 パイプラインやLNG専用船について日本の鉄鋼や船舶のメーカーの得意分野だ。シェー ルガス用の遠心分離機など関連機器でも日本企業の存在感が光る。  日本企業への期待はそれだけではない。シェールガスの採掘で効率的に割れ目を作って ガスを取り出すには、大量の水に加えて化学物質の投入が欠かせない。だが、近年、飲料 水等の汚染懸念から採掘を禁止する動きが見られる。そこで、採掘企業は化学物質から生 分解性の物質への置き換えを考えており、日本企業が持つ生分解性の素材に注目している。  また、中国などでは採掘に使う水が十分に確保できないため、事業化が遅れている。こ れらの水は飲料水ほどきれいでなくてもよく、下水などの有効活用と処理水の循環利用が 鍵を握る。まさに高度な水処理技術を持つ日本の水関連企業の出番ではないか。  電力不足に陥った日本は、燃料の天然ガスを北米からも輸入して調達先を多様化するこ とでガス価格引下げによるコスト削減と経済活性化を実現できよう。またシェールガスに はこれまで延べたように事業拡大のチャンスもある。日本政府や企業経営者は、シェール ガス革命が経済成長や企業経営に与えるインパクトを真剣に考慮する必要があるだろう。 (本稿は、2012.10.26 付繊研新聞「経済展望」(下)に掲載されました)