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2014年3月28日
製造業の高度化めざす欧米先進国
チーフエコノミスト
増田 貴司

 最近、米欧先進国が競って製造業の強化策を打ち出している。経済のサービス化が進み、 一国経済に占める製造業のウエートが低下している中で、各国政府が製造業を重視してい るのはなぜか。先進国の成長戦略のカギとなるイノベーション振興と良質な雇用創出を図 るには、強い製造業を持つことが重要と認識しているからである。  各国の取り組みを挙げてみよう。米国では、第 2 期オバマ政権が任期中の「製造業雇用 100 万人創出」を公約に掲げ、法人税引き下げや研究開発支援の拡充などを表明している。 イノベーション促進策に本腰を入れ、米国内に IT(情報技術)や物理学・生物科学の成果 を活用する「先進製造業」を根づかせることをその中核に位置づけた。  ドイツ政府は「Industrie4.0」と呼ばれる製造業高度化のための産官学連携プロジェクト を推進している。その一環として、あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT(イン ターネット・オブ・シングス)」の技術を駆使して生産プロセスの革新などを目指す取り組 みが進行中だ。  また、英国のキャメロン首相も IoT の研究を強化し、ドイツと提携して同分野の勝ち組 になろうとしている。  注目すべきは、いずれも従来型製造業の支援ではなく、IT を活用し新たな顧客価値を生 み出す高度製造業の振興に注力していることである。  ひるがえって日本はどうか。成長戦略には IT の利活用強化が盛り込まれ、製造業の事業 再編の円滑化に役立つ産業競争力強化法も成立した。だが、ものづくりと IT の融合により 製造業を高度化するビジョンは見えにくい。日本企業は、概して IT を単なる業務効率化の 道具とみなし、イノベーションを起こす武器として使う発想が乏しい。製造業の新たな事 業モデル構築のための IT 投資を促す政策が望まれる。 (本稿は、2014 年 3 月 28 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)