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2001年6月1日
繊維トレンド6月号 2001 No.16

■市況

ポリ長織物は絹の中国へ里帰り(1)  絹織物、ポリ長織物は悠久の大河を流れるが如し  <第1部> 北陸産地

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

 中国に於ける絹織物の歴史は、空漠としてその起源の詳細を知り得ないが、韓国の大邱及びその周辺地域が紀元前1世紀頃から、絹・麻織物の産地として知られていたことを鑑みると、紀元前はるかなる昔から中国では絹織物があったとみられる。その絹織物は紀元前1世紀には朝鮮半島へ、紀元後早い時期に我が国へ、渡来人によってもたらされたとみられる。イタリアなど西方へは、4世紀頃にはシルクロードを使い貿易された記録がある。絹織物は人絹がでてくる20世紀の初頭まで世界の各地で織物市場を席巻した。かくして、絹織物で名をなした世界各地の「産地」はそのブランド力で人絹織物、ナイロン織物を織り出す拠点になった。  その後、1950年代に入ってポリエステルが世に出ると、今度はいわゆる「ポリ長織物の産地」として生まれ変わる。  そして、シルクロードと朝鮮半島/日本への絹織物の商流は2000年を経た今逆流し、「ポリ長織物」と名を変えて中国へ里帰りしているかにみえる。『繊維トレンド』では、昨年10月に「中国の増産・自給化の動向」を、11月には「21世紀の世界の繊維産業は中国を軸にして廻る」と題して、ファイバーセクター・アパレルセクター中心にリポートしたが、今回は日本(北陸産地)、韓国(大邱産地)、台湾(台北/台中)、中国(浙江省、江蘇省、広東省)の産地の歴史と現状をリポートする。これをみると、上述したように2000年という長い年月を経て、絹織物は中国から東西のルートで世界を廻り、ポリ長織物に名を変えて、中国へ里帰りを果たしたことがわかる。正に歴史は悠久の大河の流れの如しだ。

■特別インタビュー

ミシンメーカーから見た世界のアパレル産業の現状と展望  -JUKI株式会社 近藤 繁樹取締役に聞く-

インタビュアー:繊維調査部長 藤井 健三

-- アパレル、流通各社の2月期決算が出そろいましたが、経常利益ベースではそれほど落ち込んでいるわけではなく、比較的下げ止まり感があります。日本のアパレルの状況を概括的にどのようにご覧になっていますか。 近藤 繊最近のアパレルの動向で注目しているのは各社がSPA(アパレル小売製造業)の比率を高くしていることです。 最初の段階ではアパレルと小売の棲み分けが難しいでしょう。大改革をしたワールドさんでさえもSPA比率は70%にすぎず、30%は依然として旧態のアパレル事業をやらざるを得ないといわれています。しかし、世の中の動きがSPA化の方向に進んでいるのは確かです。 一方、小売店も製品の自家調達が進んでいます。イトーヨーカドーさんの「IYブランド」やジャスコさんの「トップバリュ」などのようにナショナル・ブランドから自社ブランドへの切り替えも増え、小売店もアパレルへ歩み寄っています。 これからはアパレルと小売が双方に自社ブランドを持ち、百貨店や量販店の平場ではなく自分のコーナーを求めていくことになるでしょう。最近は百貨店でも平場はなくなりつつあり、日本や海外のハコモノ(専門店コーナー)がかなり増えています。現在は商取引慣行のしがらみという問題がありますが、国際的な価格競争の中で今後は変わっていくでしょう。 -- 基本的な構造が変わらざるを得ない状況の中で、(1)SPA化、(2)自社ブランド化が進展するということですね。アパレルと小売が双方から歩み寄り、互いに競争し合うことで、今度は製造業者の競争も起こりますね。 近藤 そこで優良な作り手が必要になります。アパレルの中には国内外で良いプロダクション確保のためにネットワーク作りに積極的なところもあります。今小売店が海外で直接欧米型のアパレル製造工場と結びつき、企画から製造、販売までやろうとしています。

■トピックス

繊維業界における通商政策の活用(2) 不当廉売関税制度(アンチダンピング制度)について 

繊維調査部

アンチダンピング制度について正しく理解するために、繊維調査部では「世界のAD措置発動状況」をはじめいくつかの図表を使い簡単に概要をまとめた。主な項目は次の通り。  【主な項目】 1. イアンチダンピング制度とは 2. 世界のアンチダンピングの発動状況 3. わが国が発動したケース 4. 不当廉売関税制度(アンチダンピング制度)をご理解いただくために(日本化学繊維協会) 5. 韓国・台湾産ポリエステル短繊維に対する帝人・東レ・クラレ・東洋紡・ユニチカのアンチダンピング提訴の事例

■業界情報

低価格化の浸透で厳しいアパレル企業の2000年度決算 

藤井 健三 繊維調査部長

 上場大手アパレル企業8社の2000年度の決算がまとまった。個人消費の低迷や低価格化の影響で減収傾向であり、退職給付積み立て不足額の一括処理などにより、最終赤字を経常した企業も多い。  しかし、全体として売り上げ、経常利益とも前期比の落ち込み幅が小さくなっており、下げ止まりの傾向が読みとれる。  アパレル企業を取り巻く環境は相変わらず厳しく、今期も急速な回復は望めないため売り上げは横這いを見込んでいる企業が多いが、生き残りを賭けたなお一層の経営体質の強化により経常利益は改善の方向である。

■市場動向

需要拡大がつづくスーパー繊維「アラミド繊維」 

東レ・デュポン株式会社 ケブラー技術開発部長 小菅 一彦

 デュポン社がパラ系アラミド繊維を商品化し約30年を迎えるが、一昨年来アラミド繊維の需要が供給を上回る状態となった。3年ほど前までは、供給能力が需要を上回り、価格競争も厳しい市場環境が続いていたが、自動車ブレーキ摩擦材用のアスベスト代替、IT革命に伴った光ファィバーケーブル用の抗張力材、オートバイ用タイヤのラジアル化等の市場変化、および携帯電話用プリント基板、構造物補強・補修用途の市場開発の成果等が現れてきた結果で、当面需給がタイトという基調は続くものと予想される。

■世界動向

内側から見た中国(今昔物語)12 -エピソードあれこれ-

東麗酒伊織染(南通)有限公司 社長 御法川 紘一

【主な内容】 1. 怖かったこと (1)ツボレフ (2)鯉のカラ揚げ 2. まさか!!の話 (1)乞食と失業 (2)気温40℃ 3. 楽しかったこと (1)中華料理 (2)西安の四季 (3)ハイキング

■新製品・新技術動向

信州大学先端繊維科学技術研究センター設置  -産学官連携による次世代繊維研究- 

繊維調査部

 信州大学繊維学部は、文部科学省の科学研究費(COE形成基礎研究費)による「先進繊維技術科学に関する研究」を1998年度から5年間の計画で進めているが、昨年10月に学術審議会新プログラム・COE特別委員会が現地調査を行い、その結果に基づく中間評価が先程公表された。  このCOEの基礎研究の成果を産業界に移転するのに上田市が経済産業省の補助金を受け、産学官連携支援施設を研究交流促進法により、信州大学繊維学部キャンパス内に設置することになり、4月に着工したのでその概要を報告する。

■情報化

繊維業界における取引慣行・取引条件の現状 -QR推進協議会の定例調査から-

古宮 達彦 常務取締役

 QR推進協議会では年2回、繊維各業種の組合トップを対象に取引慣行・取引条件の状況についてアンケート調査を行っている。その企画・実施は東レ経営研究所で受託しており、このたび同協議会のご了解を得て、最新(2000年7~12月)の調査結果の概要を本誌上で報告できることになった。調査は27の工連等中央組織経由、傘下各組合・団体に依頼し、67組合・団体から回答を得た。業種はさまざまであるが、(1)繊維・紡績・撚糸、(2)織布、(3)ニット、(4)染色整理、(5)衣服他製造、(6)卸の6業種に分類して集計・分析をおこなっている。

■伝説に残る織物の里シリーズ

大阪府池田市「呉服神社」

繊維調査部

日本各地に広がる「織物の里」をご存知ですか?  繊維調査部では今月から全8回にわたり伝説の残る織物発祥の地や繊維産地を取材してご紹介していきます。  阪急宝塚線の池田駅を西側に出て、高架線路わきを宝塚方面に沿って歩くと3分で神社の鳥居が目に入ります。高架線路と肩を並べるように立つこの鳥居をくぐり、50m先のわき道を左に折れると正面がくれは呉服神社です。  京阪神のベッドタウンとして発展した大阪府池田市(人口10万人)。ここに呉服という名の神社があり、その名の通り、織物の神様が祭られています。伝説では、わが国織物発祥の地だといわれていますが、池田市周辺は古くからの酒造りの町として知られていても、織物産業の名残はありません。なぜ、呉服の神がこの地に祭られているのでしょうか?

■統計・資料

1.日本の合繊各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2001年4月現在)

東レ/帝人/旭化成/三菱レイヨン/鐘紡/東洋紡/ユニチカ/クラレ

2.日本の紡績各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2001年4月現在)

ダイワボウ/シキボウ/クラボウ/富士紡/日清紡/日東紡績/東邦テキスタイル/近藤紡績所/都築紡績/稲留紡績/名古屋紡績/オーミケンシ/トスコ