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2004年5月1日
繊維トレンド5・6月号 2004 No.46

■特別レポート

東レ株式会社・(株)東レ経営研究所 共催 繊維産業シンポジウム 『北陸産地の復権を目指して』 日本のテキスタイル事業の展望と東レの戦略について

東レ株式会社  取締役テキスタイル事業部門長  田中 英造 

 去る3月10日に福井市のフェニックス・プラザにおいて、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で、繊維産業シンポジウム『北陸産地の復権を目指して』が開催されました。昨年7月に策定された新しい繊維ビジョンで、今後5年間が構造改革の最後のチャンスと位置づけられたのを受けて、関係各方面で真剣に進められている繊維産業の復権に向けた活動を念頭に、産地企業の今後の事業運営に資することを目的としています。本誌では、三人の講師がそれぞれの視点からシンポジウムに参加した繊維産業の関係者を激励した講演記録を特別レポートとして掲載します。

日本の繊維産業のポジショニングはいかにあるべきか

東京大学大学院 経済学研究科  教授  伊藤 元重 氏 

アパレル産業の課題とテキスタイル産業への期待

株式会社オンワード樫山 代表取締役会長  馬場 彰 氏

■海外動向

シリーズ「実践 中国ビジネスの果実と毒 ・・・中国ビジネス成功の秘訣」 第3回 コピー商品の実態とその対抗策・・・ 勝つためのポイント、手続き、手法など 

中国ビジネス研究所 所長 中国弁護士  馬 英華

【要点(Point)】
(1)日系企業の半数近くが「費用対効果が低い」などの理由で、コピー商品に対して積極的な対抗策を講じないで黙認しているケースが多い。中国市場で勝ち残るには、持ち前の商品力の優位性に加えて、必ずコピー商品を市場から追放するという強い意志と毅然たる態度で偽造品業者と対決することが重要である。
(2)証拠収集の不備から、偽造品業者に徹底的な打撃を与えきれなかったり、被った損害に見合う額の損害賠償獲得までに至らないケースが多い。「証拠収集の巧拙が損害賠償係争の成否を分ける。
(3)日本企業の製品が欧米製品よりもコピーされやすいのは、日系企業の知的財産権侵害問題に関する対応の甘さが一つの要因である。偽造品業者になめられると、とことん食い物にされかねない。
(4)コピー商品との戦い方として、一企業が単独で対決するより、同業他社や業界団体との連携が効果的である。

アジア主要国の合繊需給シリーズ 第2回  台湾 -合繊生産頭打ち-  CCC戦略で中国との共生を探る 

向川 利和  特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)台湾の今日に至る経済発展の過程は、日本統治時代を経て、国民党という外来政権の支配下に置かれたという経緯から、いささか錯綜したものであったとはいえ、その基礎を一貫して支えてきたのは、清国期に台湾へ移住して起業・勤労の精神と蓄財の才能を練磨し、日本統治下の教育と近代化過程で、その精神と才能を産業社会に適合させた本省人の努力であった。
(2)台湾の昨年の実質GDP成長率は3.2%で、今年は4.7%の成長を見込んでいる。大陸中国向けの輸出が昨年、2002年実績費50%も増加して、対米輸出を上回ってきており日・台・中の水平分業体制が深まっている。そんな中、台湾の繊維輸出は、昨年ついて120億$を割り込み、輸出総額に占める比率は8.2%にまで交代した。この流れはクォータがなくなる2005年以降は更に速まろう。
(3)台湾の合繊生産は、1985年以降、日米欧3極の設備削減(総弱気)をしり目に、中国の大量輸入を背景として急拡大した。しかし、中国の自給化進展と輸入管理強化、その後の中国の大増設によって、近年台湾の合繊生産は頭打ちの状況にある。今後は構造改革、起業再編の動きが必然となるだろう。

■国内動向

グローバル産業への脱皮が求められるアパレル産業  - 商社への生産丸投げの次に来る問題点と展望 - 

有限会社シナジープランニング 代表取締役  坂口 昌章

【要点(Point)】
(1)百貨店は「派遣販売員+委託仕入」というリスク回避策により構造的問題を抱えるに至った。アパレル企業の「商社丸投げ」も同様の危険をはらんでいる。
(2)仕入先への依存を高めることは国内市場には適していたかもしれないが、国際競争という視点に立つと自立した競争力が必要になる。
(3)日本の大手アパレル企業はライセンスブランド比率が高いが、ライセンスはあくまで契約であり永続するものではない。商社への丸投げは、商品の差別化に必要な仕立て、素材の差別化を困難にしている。
(4)商社への生産丸投げもプラスに捉えることも可能だ。アパレル企業と商社というユニットでグローバルマーケティング戦略を展開するという発想に立つことも可能である。
(5)きめの細かいシーズン対応、日本独自のコンテンツを活かしたブランド開発、さまざまな情報メディアとの連携等により、世界市場を対象にした新たなマーケティング戦略に期待したい。

ヨーロッパのラグジュアリーブランドが日本で売れている理由  - ”生きることの喜び”を企業のメッセージとしてブランドに込める -

小林 元  特別研究員

【要点(Point)】
(1)日本の消費者の嗜好は高度化し、アメリカ型の大量生産、大量販売のビジネスモデルから生み出されるMadeinJapanのアパレルから、ヨーロッパのラグジュアリーブランドへの選好を強めている。
(2)日本のアパレル製品が「高性能な無機質品」であるのに対し、ヨーロッパのラグジュアリーブランドは、「生きることの喜び」などの企業メッセージが込められた「顔の見える商品」になっている。
(3)日本の社会も成熟し、「結果の平等」はもはや目指さない方向へ向かっているので、自らのステータスを、装うもので表現したいとの欲求は強まってくるであろう。
(4)日本のファッション業界は、日本の伝統文化をベースとした独自のデザインでの日本発のラグジュアリーブランドを国内外に発信する体制を整備すべき時期にきているのではないか。

最後の繊維産業政策  - 動き出した自立事業 - 

繊維ジャーナリスト  瓦林 由紀夫

【要点(Point)】
(1)これが最後の繊維産業政策とも言われる自立事業。採択事業者の「成果」がいま求められている。
(2)自立事業には大きな期待がかけられている。しかし、計画事業をクリアするためのポイントは、実行者・リーダーの冷静な判断と、アクションを起こす決断だろう。
(3)ゴールが近づいてきた15年度事業。スムーズな進行の背景には、「地道」で「身の丈にあった」歩みがある。

日本のテキスタイル産地の将来像 

経営コンサルタント  萩原 誠

【要点(Point)】
(1)テキスタイル関連企業の倒産・転業による供給スペースの縮小によって、全国に散在するテキスタイル産地の将来に曙光が見えてきた。主要なテキスタイル産地の生産能力は、全盛期から見れば天然繊維産地は四分の一、合成繊維産地は三分の一まで縮小している。
(2)国内のテキスタイル産地の目標は、「メード・イン・ジャパンの再生」である。商品にもサービスにも世界一うるさい日本の消費者に評価されれば世界市場で通用することを再認識すべきである。
(3)2003年は、日本の繊維産業の改革の方向性が明確になった年であった。「中国脅威論」も「中国共生論」へ転換した。2004年はテキスタイル産地が蓄積した技術力とノウハウを、多様なコラボレーションによって、「付加価値創造」につなげるスタートの年だ。

■新製品・新技術動向

患者視点の商品開発 ”工夫パジャマ”  -なぜ無かったのか、何が難しいのか、実感的報告 - 

株式会社メディサイト ”生き生き着” プロジェクトマネージャー 松村 敦子

世界の繊維品貿易については、下表の通り、過去40年以上に亘り枠規制による輸入数量制限が行われてきたが、本年1月1日より、完全な自由貿易体制が実現した。

【要点(Point)】
(1)入院患者を大正にした「衣」「食」「住」のアンケート調査結果を基に、既存のパジャマの改善策として”工夫パジャマ一式”(点滴カバーからスリッパまで)の原始的なものを試作してみた。
(2)見本市でそれを展示したところ反響は予想以上であった。「商品化してほしい」との要望に応えるべく臨んでみたところ相反するニーズがある、商品化に見合う縫製工場が見つからないなど難問に直面した。今は”工夫パジャマ”の商品化をあわてず、勉強期間をもつことにした。
(3)”患者視点のモノづくり”を追及し、見本市会場で脇役であり人気でもあった”工夫ベスト”と”バンダナ帽”を先行して商品化してみた。たちまち好評を得た。「こだわり」を待ち望んでいた消費者の手応えを実感した。今後、何とか糸口を見つけて再度”工夫パジャマ”の現実にたどり着きたい。

■知りたかった繊維ビジネスのキーワード

デザイナー 

有限会社シナジープランニング 代表取締役  坂口 昌章

■統計・資料

主要商品市況 

1.原油 2.ナフサ 3.PTA 4.EG 5.カプロラクタム 6.アクリロニトリル 7.綿花・ポリエステルステープル 8.ナイロンフィラメント・同織物 9.ポリエステルフィラメント・同織物 10.アクリルステープル・同紡績糸 11.ポリエステル綿混(T/C)紡績糸及び織物