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2011年9月20日
東日本大震災以降、加速する日本企業の海外シフトと貿易・産業構造の変容
シニアエコノミスト
福田 佳之

・東日本大震災後の日本の貿易収支は、サプライチェーンの寸断と代替輸入のために、悪化している。4月は▲4,677億円と31年ぶりの貿易赤字に転落した。 ・今後の貿易収支は世界経済の減速やIT関連財の生産調整、復興や発電のための資材・燃料の輸入増、原油高、円高もあって黒字を元の水準まで回復させることは当面難しい。発電関連と原油高だけでも輸入が7兆円以上増加する試算となった。しかし、所得収支が大幅な黒字であるため、経常収支段階では黒字を維持できる。 ・日本企業はリーマンショック以降、新興国内需を取り込むために海外に事業拠点をシフトしているが、大震災後、その流れは一段と加速している。このままでは国内の生産や雇用が低下する産業空洞化が進行しよう。 ・産業空洞化が進行した場合、その経済的影響について2008年度を基準にしてシミュレーションすると、2012年度の貿易収支を最大▲11兆円(GDP比▲2.3%)押し下げ、雇用も関連投資の減少分を合わせると最大122万人減少する。 ・国際分業の進展による日本企業の海外事業展開は容認しなければならない。ただし、最近の産業空洞化は企業に対して過度な負担を強いる政府のスタンスに起因する部分もある。東日本の復興を果たすためにも、政府は企業に対する抑圧的な姿勢を改めてこれ以上の空洞化を防ぐと同時に輸出振興を行うことが重要である。

【キーワード】

サプライチェーン復旧、輸入による代替、投資収益、日本ブランド、マルチビザ、事業継続、円高、産業空洞化、輸出代替効果、輸出誘発効果、逆輸入効果、産業連関表、6重苦、TPP、雇用誘発、輸出振興

PDF : TBR産業経済の論点 No.11-09b(421KB)