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2009年6月1日
経営センサー6月号 2009 No.113

■経済・産業

金融危機後の経営環境はどう変わり、日本企業はどのように対応しているか

増田 貴司 産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト

【要点(Point)】
(1)世界経済の景色は金融危機後に一変した。本稿では、企業を取り巻く環境変化を整理した上で、日本企業がこの変化をどのように乗り切り、成長しようとしているのかについて考察した。
(2)景気底入れ後も、世界経済はリーマン・ショック前の姿に戻ることはないだろう。企業を取り巻く環境変化のキーワードとしては、(1)新興国市場の存在感増大、(2)新興国のボリュームゾーン攻略の重要性、(3)モジュール化とコモディティ化の進展、(4)安くつくれる技術、などが重要である。
(3)世界経済の構造が転換し、ゲームのルールが変わったことを認識する必要がある。さもないと、日本企業はこれまで以上に「技術で勝っても事業に負ける」という苦杯をなめるケースが増える
恐れがある。
(4)製造業は、世界の需要激減、資金調達難、円高という三重苦に直面し、工場の立地戦略や「マザー工場」戦略の見直しを迫られている。
(5)日本企業は今回の不況をコスト削減や合理化など「守りの経営」を行うことで乗り切ろうとしているが、同時に需要反転後の跳躍力を鍛える「攻めの成長戦略」も忘れずに取り組んでいる企業が少なくない。
(6)金融危機後も、日本企業は内向き志向に陥ることなく、アジア新興国を中心とする海外市場の開拓を強化している。新興国専用に開発した製品の投入により新興国市場の攻略に注力する企業が増えてきた。
(7)グローバルな「市場づくり」に関しては日本企業はまだまだ未熟である。「市場づくり」の天才、サムスンから学ぶべき点は多い。

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シリーズ:わが国デジタル家電産業のグローバル展開の現状 第2回中国の流通構造の変化が日系デジタル家電メーカーに与える影響

財団法人機械振興協会経済研究所 研究員 近藤 信一

【要点(Point)】
(1)中国におけるデジタル家電製品の市場と流通構造について、中国における実態調査を中心に整理し、市場と流通構造の変化が日系デジタル家電メーカーにどのような影響を与えるかを分析した。
(2)現在の中国でのデジタル家電販売の中心は、家電量販店である。家電量販店は、2000年頃から急成長しており大都市部でのシェアを拡大している。日系デジタル家電メーカーは都市部、中でも高所得層の多い沿海部の大都市をターゲットとして、主に家電量販店で販売してきた。
(3)日系デジタル家電メーカーが、これまで通り大都市の高所得層をターゲットとしていくのか、地方都市や農村部まで市場を拡大していくのかによって、製品戦略や流通戦略が異なってくる。
(4)大都市部の高所得層をターゲットにする場合には、日本と同様のハイエンドの高価格製品を大手の家電量販店チャネルで販売することが最も効率的と考えられる。一方、地方都市や農村への販路拡大には、地方代理店、専売店ルートを併用することも有効であると考えられる。

工作機械業界の現状と課題 - 需要急減するも、中長期的には成長産業 -

永井 知美 産業経済調査部 産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)1982年に米国を抜いて以来、2008年時点で27年連続生産額世界一の座についてきた日本の工作機械業界が、2008年9月の金融危機以降、需要の大幅な減少に見舞われている。2008年11月以降、受注額の前年比減少幅は62~85%と、何度も浮き沈みを体験してきた工作機械業界でも経験のない落ち込みである。
(2)ところが、工作機械業界は必ずしも悲観一色ではない。今回の需要減も数ある不況期の一つととらえ、研究開発等将来の布石を打つ動きもある。
(3)工作機械業界は、足元需要の急減に見舞われているが、中長期的には新興市場の拡大、環境・インフラ関連向け需要の広がりにより、成長が見込まれる。
(4)日本の工作機械メーカーが、需要回復後も世界トップレベルの地位を保つには、高性能・高効率機を市場に投入し続けることに加え、新興市場においては、台頭する中韓台メーカーと差別化を図る必要があるだろう。

PDF : 詳細(PDF:994KB)

■視点・論点

Globalizationの今

日本郵船株式会社顧問 目黒 征爾

■マネジメント

元気なモノづくり中堅企業に学ぶトップインタビュー(第7回) 次々と精密機器を生み出す匠の技 -大田区の「複合技術集団」に支えられて-

有限会社安久工機 代表取締役社長 田中 隆 氏

【要点(Point)】
(1)安久工機は、小規模な企業ながら、これまで人工心臓など多くの精密機械の試作・開発に取り組んできた。
(2)ことに人工心臓は父子2代にわたるプロジェクト。田中隆社長はこのプロジェクトへの参加を通して、異分野の人的ネットワークなど多くのものを得た。
(3)現在最も力を入れているのが、視覚障害者が絵を描くための装置「触図筆ペン」。蜜蝋を使ってどんな素材にも描けるこの装置は、この分野では非常に画期的なものだ。
(4)安久工機の技術とアイデアを支えているのが、大田区にある多くの町工場の高度な技術。「工夫し、考えて仕事をする」彼らのネットワークは、世界に誇れるものである。

■ダイバーシティ&ワークライフバランス

シリーズ:経営戦略としてのダイバーシティ&ワークライフバランス(第1回) ダイバーシティ&ワークライフバランスとは

ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美 由喜

【要点(Point)】
(1)ダイバーシティ、ワークライフバランスとは、「誰でも、いつでも、どこでも」働きやすい、働き甲斐のある職場作りだ。
(2)1990年代以降、バブル崩壊に直面してしまい、あまりに経営環境が悪かったため、職場改革は後回しにされてきた。
(3)今回の大不況は、すでに主流となっている共働きモデルに合った職場作りによる日本社会を活性化ヘと転換させるチャンスだ。

PDF : 詳細(PDF:948KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 「ダイバーシティ」「チャプターイレブン」

■お薦め名著

『ブランド優位の戦略』 -個別ブランドからブランド体系の概念へ-

David A. Aaker 著 陶山計介ほか訳

■ズーム・アイ

「こんな私の仕事術」

人材開発部 川畑 由美

■今月のピックアップちゃーと

伸びる中国、転落の米国 ~ 自動車生産をめぐる攻防 ~

■TBRの広場

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