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2019年7月25日
繊維トレンド2019年7・8月号 2019 No.137

■特別レポート

東レ株式会社・株式会社東レ経営研究所 共催 繊維産業シンポジウム講演抄録 MADE IN JAPAN を世界へ

ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫

 去る3月1日に、金沢市のANA クラウンプラザホテル金沢において、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で繊維産業シンポジウム「北陸産地の新たな成長と産業競争力強化」を開催しました。当日は株式会社日本総合研究所主席研究員藻谷浩介様、ライフスタイルアクセント株式会社代表取締役 山田敏夫様、東レ株式会社 野中利幸地球環境事業戦略推進室長の3人の講師にご講演いただきました。本号ではそのうち、山田代表取締役の講演内容をご紹介します。なお、野中室長のご講演内容については、本誌『繊維トレンド』5・6月号でご紹介しています。

■ファイバー/テキスタイル

第12回アジア化繊産業会議の概要 -アジアの化繊産業は「サステナブル」な方向へ-

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主席部員 鍵山 博哉

【要点(Point)】
(1)第12回アジア化繊産業会議は、2019年4 月11~12日にインドネシア・バリで開催された。
(2)会議テーマは、「化学繊維のサステナビリティ」であり、特別テーマ報告としても、「サステナビリティ」関連テーマが多く取り上げられ、参加者の多くから高い関心が示された。特に、化繊の持続可能性、マイクロプラスチックおよび繊維くず問題などについて活発な議論が行われた。繊維くず問題では、科学的な見地に基づく客観的な研究成果の必要性などについて言及された。
(3)日本からは、世界の中長期の需要見通しを発表した。今後も世界の繊維需要は成長を続けその伸びは化繊が支える一方、2022年に合繊の需給ギャップの懸念が依然として存在、こうした中、アジアの化繊産業の環境問題などの課題への対応が必要との指摘であった。
(4)世界の化繊生産の7割を占める中国からは、改革開放以来40年の中国の化繊産業の発展動向、今後の方向性(高速成長から中速成長へ推移する中で、今後の戦略として川上遡及によるコスト低減、製品開発の強化、環境保護、インテリジェント化がポイント)が述べられた。

ミラノウニカとパリプルミエールヴィジョンから 2020年春夏向けテキスタイルのトレンド報告

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)英国と共に物つくり市場として常に先端を行くイタリアは、天然繊維中心の伝統的なテキスタイルに機能性、サステナビリティなど新たな取り組みを提案することで高く評価されており、これに化合繊素材を組み合わせることで環境問題と機能性向上に貢献する動きが更に顕著となってきている。
(2)2020年春夏向けは、ミラノでもパリでも伝統的な色使いから若い世代にアピールするオレンジ、パープル、トルコブルーなど明るくて光沢のある、これまでにない色調にシフトしている。多種にわたる花の色、輝くネオン色など旅行やスポーツを楽しむ夏をイメージした色彩が意識されている。
(3)高級アパレルブランド企業が旅行や自転車を含む屋外スポーツなどのアスレジャーと、通勤を伴う業務活動がクロスオーバーするシーンを対象として、ストレッチ性があってウォッシャブルでイージーケアなど機能を充実させた商品展開を進めている。それが、麻やウールのシルク混に、化合繊の光沢素材やスラブ糸を加えた典型的なサマールックに表れている。
(4)その他ミラノとパリの展示会を通観すると、メンズ用の生地をレディース用デザインに転用する動きがあること、若い世代が自分好みのスーツを求めてあつらえ品やイージーオーダー市場に強い関心を寄せていること、これらを含む変化がIoT (すべてのモノがインターネットにつながること)やAI(人工知能)を駆使した新しいビジネスモデルの出現を促すこととなると期待される。

■縫製/アパレル

ファッションとテクノロジーを考える YUIMA NAKAZATO -TYPE-1によるオートクチュールの民主化-

国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 准教授 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)日本人二人目のクチュールデザイナー中里唯馬は、テクノロジーを活用したTYPE-1という手段によりオートクチュールの民主化を目指す。
(2)TYPE-1とは衣服の生産と流通の新しいシステムで、特徴的なのはビス状の部品で衣服のパーツがつなぎ留められている点。
(3)TYPE-1のカギとなる縫製工程のアップデートにおいて、氷の結晶の構造、日本の着物の構造からインスピレーションを得た。
(4)TYPE-1の開発においては、異分野の専門家とのコミュニケーションの深化が最大の課題となった。
(5)異分野のテクノロジーを採用する際は、様々な偶然による発見も大切である。そして、異分野同士でコミュニケーションを取る事ができる環境を日常の中に意識してつくり、有用な偶然が生まれやすいよう、ヒントとなる要素を常に身近に置いておくことが大切である。
(6)今後は普遍的なテクノロジーに着目し、そこからインスピレーションを得たり、アップデートする余地を探したりすることに向き合いたい。

■新市場/新商品/新技術動向

「低価格×機能性」市場 -ワークマンプラスとデカトロン-

ムーンバット株式会社 顧問 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)「低価格×高機能は4,000 億円の空白市場」としてメディアで大きな話題となっている。その主役が、ワークマンとデカトロンだ。
(2)ワークマンは、現場作業や工事向けの作業服・関連用品の専門店だが、2018年9月に新業態の「ワークマンプラス」をオープンし、好調に推移していることから注目されている。
(3)デカトロンはフランスの企業で、売上高1兆4,000億円、現在54カ国、1,520 店を展開するスポーツウエアのメーカーだ。2019年3月に阪急西宮ガーデンズに日本1号店を開業した。
(4)ファミリー層だけでなく、シニアにまで広がるキャンプやアウトドアのマーケットは今後も拡大が見込まれる市場であり、ワークマンとデカトロンが打ち出す「低価格×高機能」は、有効な切り口となるだろう。

■キーポイント

衣料品市場に広がりつつあるマスカスタマイゼーション -最新の採寸技術も続々と登場して流れを加速、サステイナブル(持続可能な)のアプローチも-

ダイセン株式会社 「繊維ニュース」記者 桃井 直人

 近年の国内衣料品市場は、勢いを欠く状況が続く。「購買意欲の低下」が指摘されるようになって久しいが、実際には衣料品は売れており、バブル期からは大きく縮小しているものの、いまだ9兆数千億円の市場規模を維持している。勢いを欠いているのは大量生産・大量消費という20世紀型のモデルといえる。ニーズの多様化・細分化がもたらした従来モデルの崩壊は、衣料品販売に新たな成長モデル構築を迫ったが、答えの一つとして注目されるのがマスカスタマイゼーションやパーソナライゼーションだ。新潮流として広がりを見せつつある。

■統計・資料

主要国の合繊主要4 品種の需給動向 日本/韓国/台湾/中国/インド/アメリカ