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2004年10月1日
経営センサー10月号 2004 No.66

■特別企画

技術戦略研究会 特別シンポジウム抄録(後編) “ハイテク文化立国”日本の胎動  世界に挑む新産業の創出と技術の役割

株式会社東レ経営研究所 チーフ・コーディネーター 放送大学客員教授 飯田 汎  株式会社日立製作所中央研究所 知能システム研究部 研究主幹  宇佐美 光雄  株式会社INAX研究開発センター 創造技術研究室室長  井須 紀文  花王株式会社ヘルスケア第1研究所 第1研究室室長  小御門 雅典

“文化・知識・環境”融合ビジネスの創造と技術者のリーダーシップ ●新製造業創生に向けた、新産業・新事業創出と起業家の条件 ●IT・材料・ライフサイエンスに立脚した“文・知・環”融合ビジネスの探求  東レ経営研究所では去る6月10日・11日の両日、技術戦略研究会特別シンポジウムを開催いたしました。今回は9月号に引き続き後編として、11日のTBR課題提起、知識社会と生活文化の創造、環境調和社会と技術課題、生活文化の創造と技術者の役割、総括の5つをご紹介します。

■経済・産業

中国経済の過熱をどう見るか  -軟着陸の可能性と不安定要因-

増田 貴司  産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト

【要点(Point)】
(1)中国経済の過熱ぶりが論議を呼んでいるが、経済全体が過熱しているわけではない。現状、警戒すべきは過剰な生産・過剰な投資が行われていることである。
(2)中国の高成長を主導しているのは、活発な投資活動である。地域間の競争と銀行の積極的な融資に後押しされて、固定資産投資が急増している。
(3)足元の中国経済は、投資の伸びに極端に依存した成長パターンになっており、持続可能なレベルを超えた状況にあると考えられる。
(4)中国政府は、2004年入り後、過熱抑制策に本腰を入れて取り組んでいる。その中心的な手法は、産業政策として特定業種に的を絞って選別的に投資・貸出の抑制を行う方法(直接的な窓口指導)である。
(5)政府の過熱抑制策を受けて、中国経済は今後2005年にかけて持続可能な成長軌道(7~8%成長)へと軟着陸していく公算が大きい。
(6)2010年までの中国経済を展望すれば、《1》資産バブル崩壊の可能性、《2》投資のオーバーシュート体質、《3》所得格差拡大・失業増を背景とした社会の不安定化、といった不安定要因がある。
(7)中国経済が緩やかな減速にとどまる限り、日本経済への影響は軽微である。中国が安定的な成長軌道に軟着陸することが世界経済、日本経済にとって最善のシナリオといえる。

スピンオフ型のベンチャー企業は日本の創業を活発化させるか  -企業発ベンチャー制度の現状と課題-

福田 佳之 産業経済調査部 エコノミスト

【要点(Point)】
(1)日本の創業を促進するものとして、企業発ベンチャー制度が注目されている。本稿では、企業発ベンチャー制度をもつ6社についてヒアリングや文献調査を行い、制度比較を試みた。
(2)企業発ベンチャーは一般的なベンチャーと比較して成功率が高いといわれる。この点については、同制度で企業発ベンチャー設立に際し分社化が規定されており、また同制度がベンチャー・キャピタル(VC)の補完的役割を担っていることが影響している。
(3)それにもかかわらず、同制度の成果について企業の満足度は高くない。このことは企業の「イノベーションのジレンマ」克服の切り札としての企業発ベンチャーへの期待の大きさの裏返しといえよう。
(4)企業発ベンチャーの成功率を高めるためには、企業それぞれの努力もさることながら、技術の目利きのできるVCの育成など環境整備が必要である。

鉄鋼業界の現状と課題 -絶好調はいつまで続くか-

永井 知美 産業経済調査部 産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)鉄鋼業界は、数年前まで構造不況業種の烙印を押されていたのが嘘のような好調ぶりで、生産・内需・輸出ともに好調が続いている。
(2)鉄鋼業界「復活」の背景には、中国需要の急激な拡大、内需回復、国内余剰設備廃棄などによる需給環境好転がある。
(3)中国の金融引き締めの影響は当面軽微にとどまる模様。鉄鉱石等原料価格高騰も国内外の鋼材価格上昇、合理化効果でかなりの部分は吸収可能と見られる。
(4)日本の鉄鋼業界の絶好調がいつまで続くのか、鍵を握るのは中国である。

■視点・論点

ドラッカー経営思想のある原風景

ものつくり大学教授 上田 惇生

 ドラッカーを読んだ人は、自分のために書いてくれたと確信する。  アメリカのガールスカウトを再建したヘーゼルバイン女史は、そこにドラッカーの偉大さと普遍性があるという。  ドラッカー4歳のとき、第一次世界大戦が勃発。オーストリア・ハンガリー帝国の経済省高官だった父親と、その友人トーマス・マサリクとの会話、「これは一帝国の終わりなどではなく、一つの文明の終わりということだろうね」を耳にする。

■マネジメント

事業収益とリスクマネジメントをダイナミックに展開  -三菱商事における事業ポートフォリオ-

三菱商事株式会社 新機能事業グループ グループコントローラー部長 真田 佳幸

【要点(Point)】
(1)かつて総合商社はトレーディングの世界を活躍の主な舞台としていた。今やその分野が全収益に占める割合は後退し、「事業投資」による利益が大きく台頭してきている。
(2)この事業環境の激変に応えて三菱商事は、独自のMCVAという事業リスクをも勘案する経営管理指標を設定し、05年におけるROE達成目標15%へ向け邁進している。
(3)アジア危機という逆風を逆手にとって、1998年にリスクマネジメントにも同社独自の経営指標を策定し、それを新たな形で、ポートフォリオマネジメントに反映させている。
(4)本稿は2003年10月に行われた三菱商事の真田氏の講演をもとに要約したものである。

■人材

カウンセリングを“やる気”や“元気”にどうつなげていくか -企業内メンタルへルスに果たすカウンセリングの役割-

ヘルスカウンセリング学会認定講師 矢島 京子

【要点(Point)】
(1)現在の認知は過去の情報やイメージに左右されており、社内の雰囲気が刺激になってさまざまな感情が無自覚の内にフラッシュバックし、それに反応した社員の心は三つの悪性ストレス症状を作り出し、自信のなさや、病気や、失敗を生み出す。
(2)お互いを受け入れるコミュニケーションスキルを活用することで、能力発揮や自己表現ができ、元気に仕事ができる環境調整を行うことが重要である。

・神戸大学経営学部トップマネジメント講座開始 ・人事歳時記  酒巻 洋行 特別研究員

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード  「三位一体改革」「要素技術」

■ズーム・アイ

漢字変換に見える「らしさ」

内藤 陽子

■今月のピックアップちゃーと

中国都市部で「三種の神器」はほぼ保有!  ~日中の耐久消費財普及比率~

■TBRの広場

東レ経営研究所 特別講演会のご案内