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2010年4月1日
経営センサー4月号 2010 No.121

■経済・産業

2010 年の原油価格の見通し

三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(株) 調査部 主任研究員 芥田知至

【要点(Point)】
(1)世界経済は安定化する兆しをみせており、2010 年の商品市況は工業原材料を中心に上昇すると見込まれる。
(2)原油価格も、基調としては、緩やかな上昇が予想される。新興国の需要増加が続き、先進国でも需要の持ち直しが見込まれる。
(3)超低金利下で投機が起こりやすく、各国の政策への思惑や金融市場の変動により、原油相場の価格変動が大きくなりやすい。

 

技術で勝って事業で負けることは日本のものづくりの必然か -大量普及と高収益のビジネスモデルで注目される三菱化学メディアの戦略とは-

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田佳之

【要点(Point)】
(1)DVD プレーヤーやDRAM メモリーなど日本発の製品が2000 年代以降世界で大量に普及している。それに伴い、これらの製品における日本企業の世界シェアは急速に低下している。
(2)日本企業の競争力が低下した背景に、摺り合わせ型製品がモジュラー型に転換したことを受けて欧米と新興国企業がモジュラー型製品について国際分業したことが挙げられる。そのため、規模に劣る日本勢は不利になり、また、保有する大量の特許も楯とならなかった。
(3)DVD メディアでも日本勢は不利な立場に立たされているが、その中で唯一、高収益を実現した企業が存在する。三菱化学メディア(株)である。同社は色素材料や製造レシピを販売するなど製造プラットフォームビジネスを新興国企業に展開し、大量普及と収益拡大を達成した。
(4)菱化学メディアはDVD メディアの国際規格に自社技術の刷り込みに成功し、ブラックボックス化した色素材料などからビジネス全体をコントロールする仕組みを作った。
(5)インテルやノキアが強い理由は、バリューチェーンの特定階層のブラックボックス化と標準化を駆使したビジネスモデルを展開していることにある。さらに彼らはライバル企業の標準化の企てには徹底的に争い、決してライバル企業に技術の改版を許さない。このような知財マネジメントを実施している企業は日本では見当たらない。
(6)日本企業は新興国企業と争うのではなく、そのパワーを活用するべきであり、そのためには、大量普及と収益拡大を図る仕掛けを作るソフトパワーを身につけるべきだ。
(7)特に、部品・材料メーカーは特定階層の知的財産を独占しやすく、プラットフォームビジネスを展開しやすい立場にある。日本の部品・材料メーカーは今こそ受身姿勢の単品ビジネスから積極的なプラットフォームビジネスを展開するべき時ではないか。
(8)末尾に小川紘一・東京大学特任教授へのインタビューを掲載した。

PDF : 詳細(PDF:1,340KB)

 

リアルタイム・ウェブの時代

有限会社ケイ・エム・ネットワーク代表取締役 手島幹雄

【要点(Point)】
(1)テレビのように映像をリアルタイムで配信することが、携帯端末だけでもできるようになっている。
(2)編集されない映像やテキストをリアルタイムで閲覧できるようになったことで、情報の入手方法や発信方法が大きく変化することが予測できる。
(3)リアルタイムの映像配信も大手メディア企業の独占が崩れ、現場に近い人からの映像が価値を産むようになる。企業と顧客のコミュニティもリアルタイムのウェブ画面上に形成されることも考えられる。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

産業経済調査部

「オープンスカイ協定」「ファストファッション」

■視点・論点

情報の保存と廃棄

元株式会社東芝代表取締役専務 和久本芳彦

日米密約に関する有識者委員会の報告は、密約の問題の他に日本の公文書管理や歴史的記録の保存が、先進民主主義国としてかなり不備であることを明らかにした。公文書の保存には一般的なルールがなく、特に文書の廃棄については、担当省庁でかなり低いレベルで文書の公開、非公開が判断されてきたという実態が指摘された。公文書の公開は、国民に対する義務であり、いたずらな廃棄は許されない。廃棄は永久非公開を意味するからである。 

■マネジメント

中国企業からのロイヤリティー、またはサービスフィーによる利益回収

望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー公認会計士 望月一央

【要点(Point)】
(1)日本国外での事業展開の割合が増えるに伴い、国際間での企業グループ内役務提供を認識することの重要性が高まっている。
(2)中国においては、外貨送金にかかわる制度的枠組みより、ロイヤリティー、またはサービスフィーのいずれかの形態をとることになる。
(3)中国からのロイヤリティーまたはサービスフィー送金については、納税証憑の添付が求められており、事前に課税関係を処理しておかなければならない。

PDF : 詳細(PDF:973KB)

■ダイバーシティ&ワークライフバランス

海外のワークライフバランス 後編

ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長  渥美 由喜

【要点(Point)】
(1)官民が協働している「欧州大陸型WLB」の例として、スウェーデン、フランス、ドイツ、オランダにおけるWLB の取り組みを取り上げた。
(2)欧州大陸型WLB の企業では「暗黙知をできるだけオープンにして共有する仕組み」作りが重要であり、日本企業が学ぶ点は多い。
(3)「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を明確にするとともに、各人の仕事をリアルタイムで共有し、生産性を測定する仕組みを作るとともに、「人事評価システム」の再構築が重要だ。

PDF : 詳細(PDF:948KB)

■人材

上級MOT 短期集中研修「戦略的技術マネジメント研修」について(第17回) 「特別講演」リチウムイオン二次電池開発者が語る 「リチウムイオン二次電池の開発事例に学ぶ技術・事業開発とリーダーシップ

旭化成株式会社吉野研究室室長旭化成フェロー 旭化成イーマテリアルズ株式会社電池材料開発室室長 工学博士 吉野 彰氏 講演録 企画・記録・写真: MOT チーフディレクター 宮木宏尚

【要点(Point)】
(1)リチウムイオン二次電池の開発には15 年を要した。基礎研究、開発研究、応用研究の過程を着実に進める上では、これはごく普通のことである。
(2)基礎研究から開発研究にステップアップする際には、致命的な問題がないことを早期に確認しておくことが必要である。
(3)自社と馴染みの薄い事業開発を行う場合は、自社での単独事業、あるいはライセンス事業など試み、最終的に勝ち越せれば良い。素材から最終製品まで自社で作ってみることは、技術、事業の面で大変役に立つ。
(4)マーケットの未来を正確に読むことはできない。しかし世の中の変革の予兆は必ず発信されている。これを感じられるかどうかで大きく変わる。本当のニーズは、自らで仕掛けて積極的に取りに行かないとつかめない。
(5)「悪魔のサイクル」の中で競争優位を保つためには、あたりまえのようだが継続的に差別化技術を開発し、その技術を権利化しておくことが重要である。

PDF : 詳細(PDF:1,274KB)

■お薦め名著

明日の世界を読む力

ポール・A・ラウディシナ著 深沢政彦訳

-時には顕微鏡を望遠鏡に持ち替え、未来の峻別を!- 感知子

■ズーム・アイ

日本人は劣化などしていない!?

産業経済調査部 増田貴司

 作家の堺屋太一氏が「文藝春秋」2010年2月号への寄稿の中で気になるエピソードを紹介していました。 堺屋氏は、最近中国の縫製工場を見学したときに、中国人社員から次のような言葉を聞かされたというのです。 「日本向けのジーパンは原価が20元(約260円)ですが、中国では売れません。見て下さい、このポケットの縫い目を、中国人はこんな粗い作りのジーパンは買いません。中国人向けは原価が40元です、アメリカ向けは100 元で卸しています。」

■今月のピックアップちゃーと

薄型テレビも空洞化

~増加する日本メーカーの逆輸入品~