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2014年3月1日
人を成長させる“仮面”
シニアコンサルタント
福田 貴一

 2 月のある土曜日、娘たちの通う小学校で父親を対象にした講話会があり出席しました。この学校では年に3 回そうした機会があります。2 人の娘の父親としていろいろと考えさせられるものでした。家庭における私の立場や役割とはどのようなものか、と。  それは、長男を含めて3 人の子供たちに対しては、それぞれの成長の過程によって異なる役割が、また、妻にしてみたら子供たちへのそれとは違うものがあるのでしょう。さらに言えば、私の両親や義父母に対しても然り。  心理学では状況に応じた役割を果たす姿を「ペルソナ」と言い、「仮面」と訳されます。仮面と聞くと、例えば「仮面夫婦」などのように、本当の姿でなく何かを繕うようなニュアンスを感じますが、そうした意味だけではないように思います。自分の立場や果たすべき役割が増えていく社会生活の中で私たちはいくつかの仮面を持つようになり、その中で一貫性のある部分を保ちながら自分らしく臨むところに人間としての成長があるのではないかと考えます。  この世に誕生して、子供という立場から始まり、兄になり、夫となり、父親となり、いずれおじいちゃんに。それはさまざまな場面において言えます。仕事でつながる会社社会の中でもいくつかの仮面を持つ経験を通して成長していくのです。新人(後輩)の立場からいずれ先輩となり、担当者という役割からチームをリードするような責任を伴う立場へ。ある部分だけを担っいた立場から全体を見て大きな意思決定をする立場へと。  ある研修会の中でこんな話をすることがあります。担当者から係長になった人たちに意識の変化を促すことを意図して、「これまでと同じように仲間と一緒になって“できない理由”やグチや文句を言っている立場は、もう卒業です。さまざまな制約の中で“どうしたらできるのか”を上司と一緒になって考える役割を担っているのですよ」と。  果たすべき役割が増えていくことは一方で重荷でもあります。しかしそれは、新しい世界が広がり、自分を育てるチャンスでもあるのでしょう。時に、育児が「育自」とも言われるように親という役割を果たすことによって自らも成長するのと同じく、仕事の中でも役割を広げ試行錯誤を繰り返しながらチャレンジするところに大きな意味があるのかもしれません。  私の父は「人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくがごとし」と徳川家康の言葉を使ってよく話をしていました。父から受けた影響の一つとして、今こうして思い出すところに、親父が私に果たしてくれた役割とその存在を感じています。