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2007年8月1日
ポスドク問題に関する一考察

 ここ数年来、政府系の競争的研究資金を獲得した研究プロジェクトの追跡調査を継続して行ってきている。追跡調査とは研究プロジェクトが終了して数年を経た後で、研究の継続・発展状況や研究成果の波及効果等を調査するもので、調査の一環として研究者や学識経験者の方々から直接お話を伺う機会も多い。その中で調査の本筋からはやや外れるものの、繰り返し取り上げられる話題の一つとして、「ポスドク問題」がある。  「ポストドクター」、いわゆる「ポスドク」とは、博士号取得後の任期付の職を指すものである。大学院重点化計画により大学院の定員が増えたことで先ず博士号取得者が増大し、増加した博士号取得者の職を補うものとして、科学技術基本計画の中でポストドクター等1万人支援計画が実施されたこともあってポスドクの数は増大した。ところが、ポスドクを経験した研究者の常勤(終身)の職として考えられる大学や研究所の定員は増えいない。このことが「ポスドク問題」と呼ばれており、第2期科学技術基本計画においても「ポストドクター等1万人支援計画は、我が国の若手研究者の層を厚くし、研究現場の活性化に貢献したが、ポストドクター期間中の研究指導者との関係、期間終了後の進路等に課題が残った。」と言及されている。  平成18年8月に公表された科学技術政策研究所(NISTEP)のレポートによると、ポスドク等の延べ人数は平成16年度実績で14,854人であり、平成17年度には15,000人を超えると予測されている。またポスドク等の財源別雇用状況を見ると、競争的資金等の外部資金による支援が最も多く43に上っているとのことである。追跡調査の過程で遭遇する「ポスドク問題」のルーツはこの辺にありそうである。    ポスドクそのものについて見ても、「国際的な大競争時代を生き残り、トップレベルの科学技術力を維持・発展させていくために欠かせない、創造性・柔軟性豊かな若手研究者が確保されている」「ポスドクの増加が原動力となって、日本発の論文・特許が質量ともにレベルアップした」などの肯定的な評価がある一方、「ポスドクは甘えている」「ポスドクばかり優遇されている」「何でもかんでも政府に頼るな」「大学院まで行って博士号を持っているのだから自力で就職先も探せるはずだ」など厳しい声も聞かれるが、印象レベルの意見も多いようである。  ポスドクの大きな受け皿となってきた21世紀COEプログラムの終了が来年に迫っている現在、感覚的・情緒的な議論を排し、客観的な事実に立脚した堅実な議論が真剣になされるべきと考えるが、その前提となるべき実態把握に対する努力は、3年前の平成16年度に実施された東大の学生生活実態調査の他には、上記のNISTEPのレポートがある程度と考えられる。そのNISTEPのレポートにしても、ポスドクの雇用実態把握に向けたデータの整備との位置づけであり、実態把握そのものを目的とした調査とはなっていない。追跡調査の実施を通して培われた経験、情報、人的ネットワークを活かした実態調査を行い、ポスドク問題の解決に少しでも寄与したいと考えている今日この頃である。