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2012年2月1日
繊維トレンド1・2月号 2012 No.92

2012 年 年頭所感 繊維産業の展望と課題

寒川 雅彦 繊維調査部長

 東レ経営研究所の会員の皆さま、本誌読者の皆さま、明けましておめでとうございます。皆さまには、よき新春を迎えられたことと謹んでお慶び申し上げます。  さて、過ぐる2011 年は、リーマン・ショックによる世界経済の低迷からようやく回復の兆しを見せていた3 月11 日、東日本大震災と津波災害が発生し、多くの尊い人命が失われるという大変な惨事に見舞われました。  その後の福島第1 原発問題に係る電力不足や風評被害もありましたが、わが国の経済は震災後の落ち込みを脱して、ゆるやかな回復軌道に戻りました。また、復興需要などの消費喚起もあって、年後半まで消費は活発に動きました。

■ファイバー/テキスタイル

上期の市況を読む ―2011 年の回顧と2012 年の展望  世界経済変調、景気に試練、危険な新局面―

向川 利和  特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)ギリシャの債務危機を背景に金融市場が動揺、欧米景気の減速など世界経済の変調は「危険な新局面」(IMF)にある。世界経済には①欧州債務財政危機、②米国経済の二番底不安、③アジア経済の下振れ懸念の3 つのリスクが増大してきた。
(2)これまで世界経済をけん引してきた中国やインドなどアジア新興国では、インフレ抑制(金利上げ)と成長(金利下げ)のはざまで、困難な金融政策に苦悩する姿がある。
(3)2012 年上期の東南アジアの合繊市況は、欧州情勢への警戒感強く神経質な動きになる。

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CHINA FASHION WEEK 2012 / SS ―東レ単独のファッションショーを開催―

繊維調査部

1.はじめに  2011 年10 月25 日~ 11 月2 日、北京でCHINA FASHION WEEK(中国国際時装週:以下CFW)2012 / SS コレクションが開催された。初日には、東レも参加してファッションショーを行い、中国人デザイナーの手による自社素材のドレスを披露した。ここでは、CFW の概要と、東レのショーについて紹介する。

イタリアを中心とする2012/13 年秋冬向け生地素材のトレンドと イタリア最大の繊維クラスター「ビエラ」の新たな動きを探る

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』(World Textile Publication Ltd. 発行) 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)2011 年はギリシャに始まった国家財政の破綻懸念でEU に激震がはしり、それがイタリアに波及して、EUの統一的な運営に疑問が提示された年となった。その中で3 月から9 月にかけてイタリア、フランスで順次2012/13 年秋冬向け展示会が開かれた。このような状況に連動したのか、出展社ごとに来シーズンのコンセプトに大きな違いがあって統一性がなく、そのファッションの方向性を求めてやってきた参観者を惑わせた。
(2)それは、クラシックに新たな息吹を感じさせる風合い、冬物を軽く薄くする工夫、そして3D 効果を生地に表現する仕掛けなど見映えに重点を置いたためだ。色調としては秋冬の季節に合わせてくすんだ黄色や茶や緑の上に赤やオレンジやラメ糸が織編み組織の間から木漏れ日のように暖かい光を放っている印象だ。
(3)とはいえ、各社がそれぞれさまざまな仕上げ技術を駆使してカラフルな新しい生地を提供しようとする努力が参観者全体に好意的に受け入れられて、不安定な経済情勢にもかかわらず、順調な売上げが期待されている。
④欧州全般に製品も生地も地場で生産・調達されたものであるべきだとしてmade in Italy を歓迎するムードだ。同じように英国の業者もその出所(provenance)と品質の保証として自社の生地ラベルを製品ブランドに併記することを主要客先に促している。
(4)欧州全般に製品も生地も地場で生産・調達されたものであるべきだとしてmade in Italy を歓迎するムードだ。同じように英国の業者もその出所(provenance)と品質の保証として自社の生地ラベルを製品ブランドに併記することを主要客先に促している。
(5)その裏付けとして、イタリアのビエラ産業協会Union Industriale Biellese(UIB) 会長に就任したマリレーナ・ボリ(Marilena Bolli)が、このイタリア最大のクラスターをどのように率いて行く戦略か、Twist 誌とのインタビューをまとめた。同じ問題を抱えるわが国の産地の人々への参考として、前号に引き続いて紹介したい。

宇仁繊維株式会社 宇仁麻美子常務取締役インタビュー 創業以来、業績向上の継続 ―国内市場の拡大を主眼に、海外市場への水平展開を目指す―

繊維調査部 インタビュアー:繊維調査部長 寒川 雅彦

 宇仁繊維株式会社は、1999 年の創業以来、国内生産にこだわりながら、大量の自社ストックを保持して小ロット、多品種、短納期に徹し、追加注文にも即時対応するというサービスで事業を拡大し続けてきた。取り扱う品番数は、15,000 点を超え、2012 年度中には20,000 点に及ぶという。  本稿では、拡大を維持する国内市場と、欧米への新たな挑戦も始まっている海外市場の状況を中心に、宇仁繊維の強みについてお聞きする。

■縫製/アパレル

バングラデシュ縫製業 ―最貧国を新興国にした立役者―

日本貿易振興機構アジア経済研究所 開発研究センター次長 山形 辰史

【要点(Point)】
(1)日本においてバングラデシュは、「最貧国」から「新興国」へと再評価され始めている。その立役者が輸出向け縫製業である。
(2)1980 年代から、欧米向けの輸出によって成長したバングラデシュ縫製業に、日本が目を向け始めたのは2007 年であった。その後2010 年、2011 年(10 月まで)のバングラデシュからの衣類輸入は60 ~75% という高い伸びを示している。
(3)主要な衣料品専門店チェーンによる国際化プロセスは、ひとつの転換期を迎えている。新たな進出先市場に埋め込まれた特性の異質性・複雑性を前に各社の成長戦略は小売店舗ブランドのポートフォリオ化や卸売販路の開拓など、これまでとは異なる指向を示し始めている。
(4)縫製業における外資導入に消極的なバングラデシュから衣類を調達しようとする場合、100% 外資として投資するにはリスクが大きすぎるので、技術指導を行う製造型小売業に徹するか、現地資本と合弁事業を立ち上げることが得策と考えられる。

ファストファッションの製造工程と東南アジア縫製工場 ―カンボジア・バングラデシュ・インドネシアでのヒアリングを基に― 

信州大学 名誉教授  繊維学部 創造工学系 (同大学院工学系研究科)特任教授 大谷 毅

【要点(Point)】
(1)裁断・縫製・仕上(CMT 業務)は従前より機械化されたとはいえ、人手が必要で、相対的低賃金国が好まれる。中国・ベトナムを経てさらに西側のメコン地域やバングラデシュ、南側のインドネシア方面に分散され、次期受け皿として中国で生産される日本向け縫製品の受注を狙っている。
(2)これらの国は人口や賃金、インフラ整備状況、貿易制度、集積する資本に違いがあるが、ファストファッション(含量販店・WEB 店の類似事業部門等)は、主にコア(定番)商品中心に、現地CMT 事業者に大量に製造を委託している。
(3)ファストファッションの真骨頂は、多種大量のファッション(変番)商品を迅速に設計製造し、膨大な数の店舗に迅速に多頻度配送し、単品管理で店舗オペレーションをマネジメントすることにあり、背後にSCM やERP など情報処理システムが構築されている。
(4)ファッション(変番)の製造工程は、現状では、必ずしも東南アジアで完結していない。

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海市の婦人服ヤング、キャリア市場の分布と構成

株式会社フランドル 上海事務所 所長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)上海市の婦人服市場は、中国国内有数の市場。中でも80 后、90 后をターゲットとしたヤング、キャリア市場は最大の市場と考えられる。
(2)上海市市中心の商圏は、10(1 商圏のみ例外)に分けることができる。
(3)上海市で人気の国内外のブランドと日系ブランドを比較すると、価格帯と出店状況に関して明確な違いが見られる。
(4)百貨店/SC を中心とした商圏の一方、服飾市場、仕立屋、個人商店などの巨大な市場もあると考えられる。

■小売/消費市場

シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor 第17 回 世界の衣料品小売流通の30 年 Ⅲ

青山学院大学 経営学部 マーケティング学科 准教授 東 伸一

【要点(Point)】
(1)衣料品小売流通における近年の変化潮流は、専門店チェーンの台頭とその国際化に特徴づけられるが、90 年代半ばから加速した専門店チェーンの国際化プロセスは、今ひとつの転換期にさしかかっている。
(2)専門店チェーンの成長の転換期は、(1)市場の地理的範囲の拡大(2)小売形態の多極化原理と専門店の特質(3)専門店チェーン間の競争と異形態小売店との競争 (4) サプライヤーの希少資源化と経路支配力のゆらぎ といった4 つの主要次元に起因すると考えられる。
(3)これらと合わせて、天然資源の希少性問題や商品調達ネットワークにおける企業の社会・環境責任への積極的な対応が、小売企業の国際的な成長プロセスにおけるキーのひとつとなっている。
(4)衣料品小売企業の国際化を通じた成長戦略は、これら多様で複雑な次元をもつ商品開発・商品調達ネットワークをどのようにデザインし、管理、改善してゆくかによって、その成否が規定される。

有楽町―銀座エリア分析

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)阪急メンズ・トーキョーとルミネ有楽町店のオープンにより、有楽町から銀座にかけてのエリアが活性化している。特に、「有楽町」は商業集積エリアとしての地位を確立した。
(2)阪急メンズ・トーキョーは、ラグジュアリーブランドの集積と、個性的なMD 構築で、メンズ専門館としての存在感をアピールしている。
(3)ルミネ有楽町店は、新業態店、エリア初出店のテナントを導入するだけでなく、レディースとメンズの複合型セレクトショップやライフスタイル提案型ショップの導入により、年齢や客層の幅を広げたMD 構築を行っている。

■新市場/新製品/新技術動向

シリーズ 高齢化社会と繊維 第3回 機能設計に加えて、アパレル企業だからこそできる おしゃれなシルバー向け商品で市場を開拓 株式会社カインドウェア・プラナ

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)「 カインドウェア・プラナ」は、フォーマルウエアを製造・販売するアパレルメーカー「カインドウェア」を母体に持つ企業である。
(2)主な販売チャネルは百貨店のコーナー展開。「ワンストップですべてが揃う」店を目指し、「自立支援」をテーマに商品展開の幅は広い。
(3)店舗は前面に得意のウエアを出してシーズン提案。商品知識のあるスタッフがしっかりと接客する。
(4)機能性素材の使用は「むしろ当然」で、抗菌消臭・吸汗速乾・保温など定番機能のほかに、乾燥機対応素材、制菌加工素材などを導入、家庭での取り扱いやすさをも含めて商品設計している。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

中国に於ける繊維・ファッション関連展示会の活用について

事業開発研究所株式会社 代表取締役 島田 浩司

 図表は、私の会社がプロデュースしたブランドが出展した展示会で、「出展者及び来場者」の視点から、設定した中国展示会相関図である。  ブランドを売りたいなら、「NOVOMANIA」がある。世界で通用するTOP ブランドが多く出展し、来場者の質も高く、ブランドを伝えやすい展示会である。出展者は、実際の店舗を造作し、「店のコンセプト」を披露する。モノ(商品)の分かるバイヤー、中国 各地の主要な百貨店・ディベロッパーが集まる。  中国市場にファッションとして参入したい場合は、「mode Shanghai」「北京CHIC」へ出展するのがよい。コンセプト・デザインを理解してくれるローカルバイヤーが数多く来場する。また、メディアも多く、各社の取材を通して、市場に認知されやすい 展示会といえる。

■統計・資料

主要商品市況 Ⅰ.日本の合繊各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2012 年1 月)

東レ/帝人/旭化成/三菱レイヨン/東洋紡/ユニチカ/セーレン/東邦テナックス

Ⅱ.日本の紡績各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2012 年1 月)

ダイワボウ/シキボウ/クラボウ/ニッケ/日清紡/トーア紡コーポレーション/オーミケンシ