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2020年4月21日
東レ株式会社
患者の負担軽減に繋がる
X線シンチレータパネルの輝度向上新技術を開発

 東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、蛍光体を用いた波長変換技術を活用し、X線シンチレータパネル1)の輝度を従来比約30%向上する新技術を開発しました。本技術を適用したX線シンチレータパネルを肺疾患等の診断用に用いられる医療用X線撮影装置のX線検出器に用いることにより、従来品と比較して、より明瞭な患部の観察や被曝量の低減が可能となります。2020年度初めから販売開始します。  医療用X線撮影装置のX線検出器は、一般的にX線を可視光線に変換するシンチレータパネルと可視光線をデジタル画像に変換するフォトセンサーパネルにより構成されています。シンチレータパネルはX線を吸収して可視光線を放射する蛍光体の厚さ数百ミクロンの層からなっており、蛍光体層にはCsI 2)や、GOS 3)が用いられています。GOSは、CsIの様な長時間の蒸着工程が不要で、製造工程も簡素で低コストであり、X線に対して高安定性・高耐久性という特性を持っていますが、CsIと比較して輝度が低いという課題がありました。  これに対して東レは、ディスプレイ材料開発で長年培ってきた蛍光体による波長変換技術を活用し、GOSの輝度を大きく向上する技術の実用化に成功しました。具体的には、GOSの発光スペクトルにおけるフォトセンサーパネルの感度が低い短波長領域(350~400nm付近)の光を吸収し、感度が高い波長領域(550nm付近)の光に変換する第2の蛍光体をGOSに加える独自の配合技術を開発しました。この技術による蛍光体層「GOS-α」は、GOSの低コスト・高安定性・高耐久性をそのままに、同程度の厚みの従来品対比で輝度を約30%向上することを可能としました。  東レは、従来型のGOSを用いたX線シンチレータパネルの量産化を2016年度より開始し、医療用の一般X線撮影用途で採用されています。今回の新技術による蛍光体層「GOS-α」を適用した波長変換型X線シンチレータパネルを用いることで、採用範囲を大きく拡大し、また、新技術を当社独自の高鮮鋭度化技術であるセル方式シンチレータ4)とも組み合わせていくことで、X線シンチレータパネル事業のさらなる拡大を目指して参ります。  東レは、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けて参ります。

以 上
本技術を適用したX線シンチレータパネル図(左)と光の波長変換を表した表(右)
<語句説明>
1)X線シンチレータパネル:
X線等の放射線によって励起され、蛍光(シンチレーション)を発光する物質であるシンチレータをパネル状にしたX線撮影装置の部材。酸硫化ガドリニウム、ヨウ化セシウム等が一般的に用いられる。
2)CsI:
タリウム賦活ヨウ化セシウム。光の透過性が良好で高い輝度が得られるが、真空蒸着による形成や吸湿による特性劣化を防ぐための防湿シーリングが必要なため高コストとなる。
3)GOS:
テルビウム賦活酸硫化ガドリニウム。基材に塗布するだけで製造可能である簡便な構造である故に、低コストかつX線に対して高安定性・高耐久性という特性を持っているが、CsIと比較して輝度が低い。
4)セル方式シンチレータ:
X線を可視光に変換するシンチレータ物質が隔壁によって区画されたもの。隔壁によって可視光の拡がりが抑制されるため、非常に鮮明なX線画像を得ることができる。