2020年1月20日
東レ株式会社
レジ自動化の普及を加速させる低コスト塗布型RFIDで
世界初のUHF帯無線通信を達成
東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、高性能半導体カーボンナノチューブ(半導体CNT)複合体1)を用いた塗布型RFID2)を作製し、塗布型半導体として世界初のUHF帯3)電波での無線通信を達成しました。今回の成果は、レジの自動化や在庫管理の省力化など、小売・物流の大幅効率化が期待されているUHF帯RFIDを安価な塗布方法で作製できることを示したものです。今後、塗布型RFIDの製品化に向けた取り組みを加速して参ります。
RFIDは、長距離通信・一括読み取り等の特長があり、小売・物流における作業効率の大幅効率化が期待されています。しかし、現行のIC4)チップを用いたシリコンRFIDタグは、高温・真空を駆使した複雑なICチップ製造とアンテナへの実装工程が必要なため高コストとなり、安価な商品や使い捨てを前提としたシステムへの普及の阻害要因となっていました。そのため、低コストでICを製造し、実装工程が不要な塗布型有機半導体が注目されていますが、性能を示す移動度5)は20cm2/Vs程度と低く、UHF帯RFIDへの適用が長年の課題でした。
東レは、高性能な半導体CNT複合体を中心とする塗布型素材を活用した塗布型RFIDの研究・開発に取り組んでいます。今回、塗布型半導体としては世界最高レベルを更新する182cm2/Vsを達成しました。また、薄膜トランジスタ(TFT)にはプラス電荷が流れるp型とマイナスの電荷が流れるn型があり、CNTは元来p型を示しますが、東レ独自の材料技術により、n型特性の発現に成功し、省電力かつ低コストIC形成に必要なp型およびn型の両TFTを開発しました。
これら新材料を用いて、独自のデバイス技術とプロセス技術により、低コスト塗布プロセスで製造した24ビットメモリ搭載のRFID試作品を作製し、世界初のUHF帯電波による20cmの距離での無線通信を達成しました。当社の製品目標である60ビットメモリの実現にも目処が得られており、今回開発した低コスト塗布型RFIDが小売・物流分野に広く普及すると、各物品・商品データの収集や共有化が促進され、サプライチェーン全体の大幅効率化が期待されます。
今後、通信距離を始めとする通信性能の向上とフィルム上での製造技術構築に取り組み、塗布型RFIDの実用化を目指して参ります。なお、本研究の一部は、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」からの助成を受けて実施したものです。
東レは、コア技術である高分子化学とナノテクノロジーの融合によって、塗布型RFID技術を早期に確立し、労働力不足が深刻になりつつある小売・物流分野の効率化に貢献して参ります。そして「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の企業理念の下、社会を本質的に変えるような革新的な素材の開発に取り組んでいく所存です。