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2017年10月23日
東レリサーチセンター
ナノメートルオーダーでの形態観察と発光スペクトル解析が可能な
新規手法の開発とその導入
(STEM-CL)

 株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目1番1号、社長:川村邦昭)は、ナノメートルオーダーでの形態観察と発光スペクトル解析が可能な新規手法(STEM-CL法)を、株式会社堀場製作所(所在地:京都市南区吉祥院宮の東町2番、社長:堀場厚)と共同で開発し、本手法の受託分析サービスを開始しました。  カソードルミネッセンス(Cathodoluminescence:CL)法は、固体試料に電子線を照射し、生成された電子-正孔対が再結合する際に放出される光の波長を検出して、試料中の格子欠陥、応力、元素組成、微細構造等についての情報を得る分析手法です。電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)では観察できないような点欠陥をも検出することができ、感度の高い手法として知られています。当社は、国内の分析会社で初めて、SEM-CL法を導入しましたが、従来のSEM-CL法は、バルク試料の表面からの発光を検出するため、試料中での電子線の拡がり、電子-正孔対の拡散によって空間分解能が制限されてしまうという問題がありました。そこで、走査透過型電子顕微鏡(STEM)にCL分光装置を組み込むことで空間分解能の向上を実現し、さらに、STEM(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)に付属する他の分析手法と組み合わせて相補的に用いることで、同一試料での多面的な分析が可能となりました。 【背景】  CL法では、発光スペクトルから、バンドギャップ(バンド端発光)、欠陥・不純物のエネルギー準位についての情報を得ることができます。バンド端発光のピークシフトは、元素組成の変化、応力、量子サイズ効果など、様々な要因によって起こります。これらの現象がナノメートル以下のオーダーで起こる場合は、SEMおよびSEMに付属した元素分析手法では、空間分解能の不足により、直接観測することはできません。従って、バンド端発光のピークシフトが検出されても、従来のSEM-CL法ではどの要因に起因するかを特定することはできず、推測するに留まっていました。そのため、SEM-CL法に比べて空間分解能が高いTEMによる解析を別途行うことで現象を特定することがしばしば行われています。  これらの事情ゆえに、TEMにCL分光装置を付属させるというアイデアは古くから期待されていました。TEM観察やTEMに付属する元素分析等の手法と直接組み合わせることができるだけでなく、TEMでは数100 nm程度以下の厚さに加工した薄片試料を用いるため、試料内での電子線の空間的拡がりや電子-正孔対の拡散の効果を抑制することができ、発光スペクトルの空間分解能も向上します。しかし、SEMに比べてTEMでは試料周辺の空間的制約が厳しく、集光ミラーを設置することが難しいという事情のため、長年の間、技術の普及には至らず、近年になってようやく実現された例が報告され始めた程度です。この度、CL測定を行うTEM装置に特化した独自の光学系を構築することで、検出効率の高いSTEM-CL分光装置を実現するに至りました。 【STEM-CL法のデータの例】 ・転位、不純物の空間分布評価  発光ダイオード (Light Emitting Diode:LED)及びパワーデバイス用窒化ガリウム(GaN)基板を粉砕して作製したGaN粒子から得た発光スペクトルと、2種類の波長領域での発光強度分布を図1に示します。視野上方(point 2)では、転位によるバンド端発光強度の低下が認められます。また、視野下方(point 3)においては、400 nm程度のピーク位置で、不純物に起因すると推察される局所的な発光が認められています。そして、図1の2種類の発光強度分布から、本データにおいて30 nm程度の空間分解能が実現されていると言えます。

図1. GaN粒子の明視野STEM像、発光強度マップと発光スペクトル

図1. GaN粒子の明視野STEM像、発光強度マップと発光スペクトル

・格子歪みによるバンド端発光波長のシフト

図2.  GaN粒子の明視野STEM像と発光スペクトル

図2. GaN粒子の明視野STEM像と発光スペクトル

 図1と同様の方法で作製した別のGaN粒子から得た発光スペクトルを図2に示します。点欠陥に起因する500-600 nm付近のブロードなピーク(イエロールミネッセンス)強度が低く、当該粒子には欠陥がほとんど導入されていないと考えられます。370 nm付近のバンド端発光波長近傍を拡大すると、粒子端部に近いほどピーク位置が低波長側へシフトしていることがわかります。このことから、粒子端部では粉砕時に格子歪みが導入されたと考えられます。



【サービスの特徴やメリット】


新しく提供するサービスの特徴やメリットを下記に示します。

ナノメートルオーダーの高空間分解能で発光スペクトルを検出できます。
STEMに付属するナノメートルオーダーの分解能を持つ他の機能(STEM像、電子回折、特性X線エネルギー分散法等)との併用により、同一試料を用いて、形態観察、および、欠陥分布、結晶構造、元素組成等の評価を行うことができます。


また、本サービスの応用例を下記に示します。

発光素子における量子井戸層の構造、元素組成分布と発光分布の評価
抵抗変化メモリにおける抵抗変化絶縁性材料や、ディスプレイにおける酸化物半導体の酸素欠損評価
スマートフォンに使用させている積層セラミックコンデンサー、SAWフィルター、リチウムイオン電池正極材などの酸素欠損評価
ぺロブスカイト型強誘電体メモリや薄膜太陽電池の酸素欠損評価
SiC, GaN, Ga2O3, Diamond等、次世代のパワーデバイスの微小部の結晶欠陥やキャリア濃度評価
金属ナノ粒子の局在表面プラズモンの評価

【本サービスのお問い合わせ先】 本プレスリリースの内容に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。

(株)東レリサーチセンター
分析ご相談窓口
TEL:0120-95-2186
形態科学研究部第1研究室 担当:川崎
TEL:077-533-8656