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2020年12月25日
高性能レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析計による
各種材料中の微量元素直接定量分析および定量イメージングへの展開

【要旨】  当社は、このたび、最先端のレーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を受託分析会社で初めて導入し、受託サービスを開始しました。本装置は、フェムト秒レーザーに接続されたガルバノ光学系を搭載し、試料および標準品の高速交互レーザー照射によるサンプリングというTRC独自の前処理・測定方法を確立することで、大気圧下での固体試料のサブppm レベルまでの正確な元素定量分析が可能になりました。  従来、正確な微量元素分析に必要であった、強酸などによる試料の溶解、検量線作成のための数水準濃度の標準溶液の調製などの湿式の前処理は不要になり、これまで分析できなかった難溶性材料にも適用できます。また、試料切片の微量元素定量イメージングにも活用できるので、今後は生体試料、各種ポリマー、樹脂/金属接合部材など各種試料の定量イメージングも提供する予定です。 【背景】  半導体ウェハなどの先端材料は、不純物が性能低下につながるため、微量元素定量分析による正確な不純物濃度管理が必須です。微量元素定量分析には、クリーンルームなどの清浄な環境下で試料を溶解する前処理が必要ですが、炭化珪素や窒化ガリウムなどの次世代半導体材料は難溶性であることが多く、正確な不純物量を確認できないことが課題となっていました。一方、レーザーを照射して固体を直接サンプリングする装置は従来から存在していましたが、正確な定量のためには同じ媒体で構成された標準品が不可欠であり、それが入手できないことが問題となっていました。  これに対して、共同研究先の東京大学大学院理学系研究科の平田岳史教授により、パルス幅の短いフェムト秒レーザーとガルバノ光学系を組合せて、試料と標準品を交互にレーザー照射して試料サンプリング物に標準サンプリング物を気相のまま混合する「標準添加法」が開発され、試料を溶解することなく固体のまま微量元素を従来法同様の定量性で正確に定量することが可能となりました。また、高速多点レーザー照射を活用した微量元素の定量イメージングにより、生体試料切片などに対して、大気圧下でそのまま元素分布を調べることが可能です。 【今回の成果の重要性】  次世代半導体などの難溶性材料についても、固体のまま定量分析でき正確な不純物濃度を提供できるようになることで、お客様の材料中の不純物低減に向けた工程改善、高性能デバイス開発への寄与を期待しています。また、試料切片の微量元素定量イメージングを活用して、フィルムや樹脂中の残存触媒分布把握、樹脂/金属接着部材における金属の樹脂への拡散評価、生体における金属含有製剤の薬効評価および疾病とミネラル成分の関係解明などにも役立つと期待しています。  一方、従来法において前処理に多量に使用されてきた強酸などの特別管理産業廃棄物の排出削減、分析担当者の危険薬品使用作業の減少など環境的側面、労働環境的側面でも意義は大きいと考えています。

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表1: 窒化珪素(認証値あり)の従来法と本装置による元素定量値の比較(単位:μg/g)

【今後の展望】  当社では今後も平田教授との共同研究を通じて装置開発を進め、高性能化に向けて不純物低減が必要な各種先端材料への適用を図るとともに、現在、既に取り組んでいるライフサイエンス分野を含めた様々な分野への応用展開を加速させ、お客様の材料開発、課題解決に貢献していきます。